七冠制覇の井山と重なる軌跡 囲碁の19歳・芝野新名人

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囲碁・将棋
2019/10/8 21:55
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最年少での七大タイトルを獲得した芝野虎丸新名人(8日夜、静岡県熱海市)

最年少での七大タイトルを獲得した芝野虎丸新名人(8日夜、静岡県熱海市)

囲碁界に史上初の10代名人が誕生した。8日、第44期名人戦七番勝負を4勝1敗で制してタイトルを奪取した芝野虎丸新名人(19)は「ホッとしたけど、自分なんかが名人でいいのかな」とはにかみながら控えめに喜びを語った。

■19歳・芝野が名人に 囲碁界初、10代で七大タイトル

中国や韓国のトップ棋士とネット対局で腕を磨いてきた新鋭が、第一人者の井山裕太王座(30、棋聖・本因坊・天元)を追う世代の筆頭に躍り出た。

対局後の記者会見で芝野は「初めての七大タイトル獲得で棋士として大きな分岐点になると思う。これに満足せずに頑張っていきたい」と話した。今後の目標としては七冠独占を2度達成している井山の名を挙げた。

これまでの歩みは井山とよく似ている。囲碁に縁の薄い家庭で育ち、幼稚園の頃に父が買ってきたテレビゲームでルールを覚えた。子供時代からネット対局を繰り返したのも同じ。井山の相手が師匠の石井邦生九段(77)だったのに対し、芝野の相手は中韓の一癖も二癖もある若手たちだった。

そこで培われたのがメンタルの強さと勝負術だ。誰と打っても物おじせず、「対局中もポーカーフェースを崩さないのは不気味でもある」と井山は評する。読みの鋭さに支えられた、相手が対応に困るような手を次々と繰り出す勝負術にも定評がある。

プロ入りこそ14歳と井山より遅れたが、順調に実力を伸ばして17歳で全棋士参加棋戦で初優勝。七大タイトル獲得では井山の記録を抜いた。

第一人者の井山王座は25日開幕の王座戦で芝野新名人の挑戦を受ける(写真は前期の王座戦で防衛を果たした井山王座、2018年12月)

第一人者の井山王座は25日開幕の王座戦で芝野新名人の挑戦を受ける(写真は前期の王座戦で防衛を果たした井山王座、2018年12月)

「中3でプロ入りしたとき『やった』なんて思わなかった」「そもそもプロを目指してなかった」――。名人獲得の1週間前、芝野が漏らした驚きの本音だ。一緒に囲碁を始めた兄、芝野龍之介二段(21)の修業に付いていっただけだという。「なんとなく」でプロになれてしまう才能だったことがうかがえる。

多くのプロ棋士が研究に活用するAI(人工知能)ソフトも、ほぼ使わない。その理由は「パソコンの入れ方が分からないから」。仲間のパソコンを借りることはあるが、「トップ棋士の対局を見れば最新の打ち方はわかる。AIのマネをする人をマネればいい」と芝野は笑う。AIとは距離を置いてきた井山の態度と通じるところがある。

海外勢に対抗するため国内トップ棋士で結成したナショナルチームの監督を務める高尾紳路九段(42)は芝野について「まだまだ伸びしろはある」とみる。

「打ちたい手を打つ」を信条に七冠独占を2度成し遂げ、囲碁界で初めて国民栄誉賞を受賞した井山との初のタイトル戦も近く開幕する。25日に第1局が打たれる王座戦五番勝負は囲碁界の今後を占う上で注目のシリーズとなる。

(山川公生)

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