2カ月ぶりに不自由展「問題と思わず」 会場前で抗議も

2019/10/8 19:00
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愛知県の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」で中止された企画展「表現の不自由展・その後」が8日午後、再開した。展示物への抗議が殺到して8月1日の開幕から3日間で中止に追い込まれて以来、約2カ月ぶり。鑑賞した人からは「中止するほど問題がある作品と思わなかった」「芸術祭が不自由展だけ注目されて残念」との声が上がった。

「表現の不自由展・その後」が展示再開を迎え、入場前に金属探知機による検査を受ける来場者(8日午後、名古屋市)=代表撮影

「表現の不自由展・その後」が展示再開を迎え、入場前に金属探知機による検査を受ける来場者(8日午後、名古屋市)=代表撮影

元従軍慰安婦を象徴した「平和の少女像」や、昭和天皇を扱った映像作品など中止前に見ることができた不自由展の全作品を公開したほか、中止に反発して自主的に取りやめていた海外作家らも展示を再開した。

芸術祭の実行委員会(会長・大村秀章愛知県知事)は、混乱を回避するため抽選方式を導入して入場者を制限。会場には朝から鑑賞を希望する多くの人が詰めかけ、午後2時10分からと午後4時20分からの計2回の抽選に、延べ約1350人が並んだ。いずれの回も抽選倍率は20倍超となり、選ばれた30人ずつがガイドとともに鑑賞した。

実行委は安全確保のため、金属探知機による検査や手荷物の預かりを実施。展示物の動画撮影を禁止し、SNS(交流サイト)への拡散防止も求めた。

会場の前では「公金の不正使用を認めるな」などと書かれたプラカードを掲げて抗議する人の姿があったが、実行委は「会場では特に大きな混乱はなかった」としている。9日以降は公開回数を増やす方向で検討する。会期末の14日までの公開となる見通しだ。

鑑賞した千葉県船橋市の女性会社員(25)は「展示を中止するほど問題がある作品とは思わなかった。他の美術展でも同様の表現はある」と冷静に受け止めた。愛知県岡崎市の男性会社員(39)は「芸術祭が、不自由展の話題ばかりで注目されてしまったのは残念だ」と語った。

一方、萩生田光一文部科学相は8日の記者会見で不自由展が再開されても補助金不交付の判断は変わらないとの認識を改めて示した。芸術祭実行委の会長代行を務める名古屋市の河村たかし市長は再開について「とんでもないこと。暴力そのもので(市に)相談もなかった」と批判し、会場前で約10分間座り込むなどした。県や実行委に8日寄せられた抗議電話は約200件だったという。

芸術祭と不自由展の両実行委は9月30日、中止前の展示内容を維持したうえで再開することで合意し、協議を開始。事前予約の整理券方式にするなどの条件付きで、10月6~8日の再開を目指してきた。展示方法や警備面などを巡って協議が難航したが、8日の再開にこぎ着けた。

準備の甘さ、実行委反省を
河本志朗・日本大教授(危機管理)の話 抗議や脅迫が相次ぐことは開幕前から想定できる展示内容であり、実行委員会の会長を務める知事や関係者は事前の準備の甘さを反省しなければならない。
再開にあたって脅迫に屈しないと明確にしたことは評価できるが、反対意見にも配慮し、市民の納得を得ることが大切だ。十分な安全対策を施していることや表現の自由の重みについて主催者が説明を尽くしていくべきだ。今後も執拗な脅迫が続く恐れはあり、警察とも協力しながら対策を徹底する必要がある。

芸術祭の期間中再開、評価
横大道聡・慶応大教授(憲法学)の話 展示の中止は自由な情報の流通や豊かな表現を損なうことであり、約2カ月の時間は要したが芸術祭の期間中に再開できたことは評価したい。安全上の理由で中止を決めたのだから、安全対策が整えば再開するのは当然だろう。
今回は実行委員会のトップを知事が務めていたため、「行政が展示の内容を支持しているのか」との批判を招くことになった。実行委のトップは芸術家などの専門家に任せ、行政は予算を出すだけ、という枠組みをより明確にすべきだった。
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