豪で干ばつ拡大、約50年ぶり少雨 穀物不作で輸出減

2019/10/8 19:00
保存
共有
印刷
その他

【シドニー=松本史】オーストラリアで長引く干ばつの影響が広がっている。2019年に入ってからの降水量は54年ぶりの少なさだ。20年にかけて小麦や菜種などの生産量は過去10年の平均を大きく下回り、牧草の減少などで食肉や羊毛の輸出も落ち込む見通し。干ばつの規模は従来より拡大しており、地球温暖化が一因との見方もある。豪経済や世界の農産物市場に影響を与えそうだ。

干ばつの影響を受けた農家を視察するモリソン首相(左)(9月、豪クイーンズランド州)=AAP

「豪産小麦不足がもたらす食の安全への不安」。3日、豪紙オーストラリアン・フィナンシャル・レビューはこんな見出しの記事を掲載した。

内容はこうだ。長引く干ばつで豪州の小麦生産が減少し、輸入国のインドネシアでは豪産小麦が不足した。代わりに黒海周辺やアルゼンチンから輸入を増やしたが、麺に加工すると豪産に比べ色が濃くなり、消費者の受けが悪い。製麺業者は漂白のために化学物質を加え、安全性の懸念が出ているという。

「ニューサウスウェールズ(NSW)州やクイーンズランド州の状況は非常に悪かった」。豪農業資源経済科学局は9月、19年度(19年7月~20年6月)の小麦や大麦、菜種など12種類の冬季栽培作物の総生産量が約3380万トンと、過去10年の平均を16%下回るだろうと発表した。重量ベースで生産量の過半を占める小麦は10年平均を22%、菜種は同29%割り込む見通しだ。

豪政府によると、19年1~9月の豪州全体の降水量は1965年以来の低水準に落ち込んだ。豪州の家畜飼育は放牧が主流だが、小雨で牧草の生育が進まない。農業資源経済局は9月、19年度の牛肉や羊肉など家畜関連の輸出額が前年度比14%減になる見通しだと発表した。

豪準備銀行は8月の金融政策報告書で干ばつによる生産量の低下に加え、水資源や飼料費用の増加で、1~3月期の農家の収益が18年4~6月期に比べ24%下落したと指摘した。「今後3カ月も国土の大半で平年より乾燥した状況が予想され、農業部門のさらなる弱さにつながる可能性がある」としている。

米農務省によると、18~19年度の豪産小麦・小麦粉の輸出量は約984万トンで、世界全体の輸出量の約5%を占める。豪州の農業は国内総生産(GDP)全体の3%を占め、干ばつが続けばGDPの押し下げ要因になりかねない。

加えて深刻化するのが、乾燥と高温による森林火災だ。豪州の森林火災はシドニーのあるNSW州では夏を迎える12月ごろに多発する。しかし今年はすでにクイーンズランドやNSW州で100を超える森林火災が発生している。

政府機関の森林火災・自然災害研究センターは、降雨量の少なさなどから「東部の多くの地域で森林火災シーズンが例年より早く始まった」と指摘する。「高温や強風が(今後も)火災の発生リスクを高める」と警告している。

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]