トランプ氏、シリア撤収巡り迷走 安保チームと溝

2019/10/8 19:30
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【ワシントン=中村亮】トランプ米政権がシリア問題への対応で迷走している。トランプ大統領が7日に表明した駐留米軍の撤収を米政府高官は否定した。トランプ氏は米軍撤収を公約に掲げ、2020年の大統領選に向けて実現を重視する一方、国防総省は駐留は必要だとの判断で、双方の認識には溝がある。シリアでの米国の存在感低下は地域情勢をさらに混乱させかねない。

シリアからの米軍撤収で混乱拡大も(9月、トルコ軍とシリア北東部をパトロールする米軍車両)=ロイター

トルコは同国がテロ組織の一派と見なすクルド人主体の勢力「シリア民主軍(SDF)」に対する軍事行動を準備しているとされる。トランプ氏はトルコの軍事行動を黙認し、ツイッターで「終わりなき愚かな戦争はやめる」と訴え、シリアから米軍を撤収させる方針を示していた。

しかしその後、米政府高官が記者団に対し、シリアでの駐留規模は変わらないと説明した。同高官によると、トランプ氏はトルコの攻撃による被害を避けるため、50~100人の米兵をシリア国内の別の基地に移動させるよう指示したと述べ、撤収ではないとの認識を示した。

トランプ氏もトルコとSDFをめぐり、「私はどの当事者の味方もしない」と、自身の発言を事実上修正した。トランプ氏は「トルコが私の許容する限度を超えたら、トルコ経済を完全に破壊する」ともツイートし、トルコの軍事行動をけん制した。

トランプ氏が一時撤収を表明したのは、大統領選での再選に向けて成果をアピールできると考えたからだ。トランプ氏は「米国第一」の外交方針を掲げ、海外の米軍駐留経費は削減すべきだと主張してきた。7日も「私は撤収を掲げて当選した」と語り、16年の大統領選での公約実現にこだわる姿勢を示した。

今回の軌道修正は与党・共和党と米安全保障チームへの配慮があったとみられる。マルコ・ルビオ上院議員は7日、ツイッターで「シリア撤収は重大な誤りだ」と非難し、リンゼー・グラム上院議員も「クルド人を見捨てれば米国は信頼できない相手だという危険なシグナルになる」と警鐘を鳴らしていた。

政権の安保チームもトランプ氏の決断に難色を示したようだ。最優先課題の過激派組織「イスラム国(IS)」掃討には米軍が駐留してSDFへの支援を続ける必要があるとみるからだ。米軍撤収を受けてトルコが攻撃を仕掛ければSDFはIS掃討に力を割けずISの復活につながるリスクがある。

米軍はトルコとSDF双方の信頼をつなぎ留める措置を最近講じていた。米軍はトルコとSDFに対する共同監視活動を展開してトルコのSDFに対する懸念を緩和する一方、SDFの安全も担保してきた。

しかし、今回の一連の混乱で、米政権に対するSDFの信頼は傷ついた。SDFは7日の声明で「米国が(SDFを支援するとの)約束を守らなかった」と失望を表明した。ワシントン近東政策研究所のダナ・ストロール上級研究員は「米国の安保チームは世界各地からの米軍撤収を何とか先送りしているが、同盟国はトランプ氏の(撤収の)意向を信じて行動するだろう」と指摘する。

SDFがトランプ政権のシリア撤収の意思が変わらないと判断すれば、シリアのアサド政権やロシアに支援を求める可能性がある。米軍の存在感は一段と下がり、中東の秩序はさらに混沌としかねない。

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