英離脱新提案 EU、週内判断へ 慎重論根強く

英EU離脱
2019/10/8 19:30
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【ブリュッセル=竹内康雄】欧州連合(EU)は週内にも英政府がEU離脱の条件を示した新提案を受け入れるかどうかを判断する。足元ではEUの首脳らから慎重な反応が目立つ。アイルランド島の国境問題に関する税関などの課題を十分に解消できていないとみているためだ。10月末の離脱期限が迫る中、英EUは8日以降も協議を続けるが、英側は破談も視野に入れ始めている。

EUと英国は合意に向けて協議を続けているが……=ロイター

マクロン仏大統領は6日のジョンソン英首相との電話協議で、EUとして新提案が受け入れ可能かどうかの評価を週内に終えるとの見通しを伝えた。英国を含むEUトップが集まる首脳会議は17~18日。週内に一定の判断をして、残りの時間で英側にさらに譲歩を求めたり、EUとしての準備にあてたりする考えだ。

離脱条件を巡る最大の焦点は英国の一部である北アイルランドと、地続きでEU加盟国のアイルランドとの国境をどう扱うかだ。英国とEUは過去の紛争の反省から離脱後も物理的な国境を設けない方針では一致する。メイ前首相は国境問題で具体策が見つからない間は英国がEUの関税同盟に残り続ける安全策(バックストップ)で合意したが、ジョンソン氏は新提案でこれを削除した。

新提案へのEU側の反応は慎重姿勢が目立つ。オランダのブロック外相は7日、「英国はもっと現実性と明確さを示すべきだ」と主張した。欧州議会で英離脱を担当する委員会は3日の声明で、新提案を「合意の基礎とはならない」と切り捨てた。新提案には不足している点があるとみる。

「2つの重要な点で新しい案がなければ、我々は前進できない」。EUのバルニエ首席交渉官は5日の仏紙ルモンドとのインタビューにこう語った。EUが重視するのはEUの単一市場・関税同盟と、北アイルランドの和平合意がしっかり守られるかどうかだ。

新提案は英国が離脱移行期間が終わる2020年末に関税同盟を離脱する方針を明確にした。一方で北アイルランドだけは農産品などモノの分野でEUの単一市場に残る内容だ。単一市場の恩恵を受けて北アイルランドとアイルランドの間では検疫などのチェックは不要のままだが、税関検査は必要になる。

新提案はこの税関検査を国境から離れた場所で実施したり、電子申告にして簡素化したりする。だがEU側は「内容が曖昧で、密輸などの違法行為を防ぐ手立てがあるようにみえない」(担当者)と、英側にどう実効性を担保するのか詳細をただしているもようだ。

もう一つはEU単一市場に残るかどうかを決めるのに、北アイルランド議会の4年ごとの承認が必要になるという点だ。英議会で新提案の承認を得るため、ジョンソン政権と閣外協力する北アイルランド議会第1党の支持を取り付けるためのジョンソン氏の譲歩策だ。

離脱を決めた場合に国境管理をどうするかの具体策はなく、恒久的な対策とはいえない。加えて北アイルランドは連立交渉が不調で3年近く政府不在が続く。北アイルランドは長年の紛争の舞台だっただけに、この問題が対立再燃に火をつけかねないとの懸念もある。

一方の英側はEUの慎重姿勢に対し「破談」をちらつかせて揺さぶっている。英BBCは8日、英政府が協議の打ち切りの準備に入ったと報じた。EU側は混乱をもたらす合意なき離脱は避けたいのが本音だが、弱気な姿勢はみせられない。10月末の期限が迫り、交渉はヤマ場を迎える。

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