今日も走ろう(鏑木毅)

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ビッグレースを終えての喪失感 次の挑戦のバネに

2019/10/10 3:00
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UTMB(ウルトラトレイル・デュ・モンブラン)が終わって1カ月がたった。大きなプロジェクトが終わった安堵感で、しばらくはほっとしていたが、大きな目標がなくなったことで次第にぽっかりと心に穴が開いたような気持ちになってきた。

UTMBをめざしている時はレースやトレーニングのことが常に頭から離れず、一心不乱に集中していた。そんな生活を窮屈に感じたこともあったが、いざ闘いを終えるとこれから何をすればいいのかと戸惑ってしまう。

体のあちこちにダメージを抱えながら北海道留寿都村のレースにゲスト出場

体のあちこちにダメージを抱えながら北海道留寿都村のレースにゲスト出場

完全に体を休めるとかえって体調が悪くなるため、自転車や水泳など関節に負荷がかからないトレーニングを行っている。それでもちょっとつらい練習になると正直何のためにこんなことしているのだろうと疑問に感じ、やる気がなえてしまう。

これまで体調に気を配り、節制した食事を心がけていたが、挑戦が一段落ついたため、菓子であれジャンクフードであれアルコールであれ、体が欲するものを食べている。こんな怠惰な生活だからさぞかし体重が増えたと思いきや、かえって体重は減っている。おそらくトレーニングレベルが下がり、筋肉が落ちて一時的に体重が減少したのだろう。

そうやってトレーニングを続けていても駅の階段の上りもおっくうになるほどで、わずかな時間でも体力が急激に落ちてしまっている。UTMB後に北海道留寿都村の大会にゲストランナーとして呼んでいただいた。わずか15キロメートルなのに思うように体が動かず、全身が筋肉痛に襲われた。つい3週間前にこの10倍以上の距離の険しい山岳地を駆け抜けた自分自身の体とは思えず、ただ驚くばかりだ。せっかく3年間かけて鍛えた能力がどんどん落ち、何とももったいない気持ちになるとともに、あらためて私の年齢でアスリートで居続ける厳しさを痛感している。

それにしてもUTMBの170キロメートルの距離と格闘した肉体のダメージはすさまじい。

筋肉痛など直接的な疲労は1週間ほどで回復したが、微熱やものもらい、発疹、口内炎とさまざまな症状に悩まされている。きっと免疫力が極端に落ちて、いたるところでダメージが出てきたのだろう。緊張感もなくなりここ数年の疲労が一気に噴出しているのかもしれない。

どうも自分は何かに向かって走り続けていないといられない回遊魚のような性分らしい。ここ1カ月間は次のチャレンジのことばかりを考えている。おぼろげながらいくつか頭に浮かんではいるが、果たして実現できるかどうかは全くわからない。

ただこのように考えているときが一番ワクワクして心地良い。親しくさせていただいているプロスキーヤーの三浦雄一郎さんは「夢を諦めることこそが、人間にとって最も無理をしている状態」という。確かにそうなのかもしれない。今は心のなかに湧き上がってくる次の挑戦へのエネルギーをじっくりため込む充電期間。心身ともに再起を果たす、その時に向けてまずは身も心も十分リセットしておこうと思う。

(プロトトレイルランナー)

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