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豊島逸夫の金のつぶやき

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雇用統計の謎、NY株高で円高

2019/10/7 10:47
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先週、米サプライマネジメント協会(ISM)製造業・非製造業景況感指数が相次ぐ悪化でダウ平均も計1000ドル以上下落していた。そこで4日金曜日発表の雇用統計には、いつにも増して市場の関心が高まっていた。

結果は、失業率3.5%と50年ぶり低水準。これで、景気後退懸念とは言わせない、というほどのインパクトがあった。対して、新規雇用と賃金の数字は物足りない。ここは、やはり「予防的利下げ」のワクチン投与がもう一回は必要であろう、との観測も根強く残る。結果的に、マーケットは、景気悪化観測後退と利下げ期待の「二兎」を得た。4日のダウ平均は372ドル急騰を演じた。先週一時、警戒水域とされる20の大台を突破していたVIX指数も17まで反落した。

とはいえ、利下げ確率は雇用統計発表後に9割台から7割台に下がっている。為替市場では、106円台で円高が若干進行した。債券市場でも米10年債利回りは1.52%の低水準に張り付いたままだ。安全資産としての米国債買いは続く気配だ。

そこで、株価の反応はいいとこ取りではないか、と半信半疑の受け止め方も目立つ。雇用統計を市場はいまだ吟味中といえる。新規雇用増は13.6万人どまり。平均時給も約1年ぶりに3%台を割り込み、前年比2.9%どまり。

しかし、失業率は3.5%と50年ぶりという低水準。労働参加率は63.2%と変わっていないので、単に求職活動者が増えたゆえの数字上の失業率低下ではない。良質の雇用改善だ。7月、8月の新規雇用増も計4万5千人、上方修正された。しかし、直近3カ月の平均で見れば、月15万7千人の増加幅にとどまる。18年通年の22万3千人からは大きな減速だ。

ヘッジファンドに言わせれば、トレーダーのポジションに都合良く解釈できる数字が並ぶ。これはゴールディロックス(適温)の雇用統計とも表現される。

今朝は米国雇用不安要因として、大規模リストラ、ストライキが不安視されるゼネラル・モーターズ(GM)の労組が述べた悲観的見通しも材料視されている。米連邦準備理事会(FRB)幹部の発言も相次いだ。前回の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げ決定に反対票を投じたボストン連銀のローゼングレン総裁は、「今は、利下げに関してはオープン」と語った。利下げ反対論撤回か、と市場はざわめく。いっぽう、生粋のタカ派とされるメスタ―・クリーブランド連銀総裁は、「米経済の消費は堅調、通商摩擦は不透明」と語る。

総じて、今週は金曜発表の米消費者信頼感指数とワシントンで開催予定の米中貿易協議の行方、更に、FOMC議事録発表が注目される。早速、本日早朝には、米中貿易協議での中国側提案にハイテク覇権に関わるIT産業補助金など核心事項は入らず、との外電報道が流れ円高が若干進行した。貿易協議の部分的合意(ミニディール)でとりあえず双方が矛を収めるという楽観論を打ち消す観測報道である。

ウクライナ疑惑に関する調査をトランプ大統領が中国にも依頼したことが、中国側の態度を強気にさせた、とされる。大統領選挙視野に、弾劾問題を持て余し、トランプ陣営も焦ってきた。ここは、中国側として通商協議に強硬姿勢で臨むであろう、との読みだ。

なお、日本側として気になるのは、米中の議論で引き合いに出されるのが「日米貿易協議の前例」ということだ。米中も、日米に倣い長期貿易協議の第1段階として、当面、事を荒立てず、停戦協定により先送りする、との読みが楽観論の根拠にされている。

なお、国慶節明けで再開する上海市場も注目される。先週の香港危機のエスカレートがいまだ織り込まれていない。中国の外貨準備が7カ月ぶり低水準に落ち込んだことは、人民元不安による中国からのマネー流出を連想させる。波乱要因が重なる1週間となる予感に市場は身構えている。

豊島逸夫(としま・いつお)
 豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・公式サイト(www.toshimajibu.org)
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuo.toshima@toshimajibu.org

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