北朝鮮、米に一段の譲歩迫る 段階的非核化に固執

北朝鮮
米朝首脳会談
2019/10/6 17:47 (2019/10/6 21:59更新)
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【ソウル=恩地洋介、ワシントン=永沢毅】約7カ月ぶりとなる米朝の実質的な非核化交渉は、再び物別れに終わった。北朝鮮は米国の姿勢を「手ぶらで来た」と非難し、年末までの一方的な期限を切り再考を迫った。対話が破局する瀬戸際を演じる一方、中長距離の弾道ミサイル発射を再開する可能性をちらつかせながら、融和的姿勢を示す米国に一段の譲歩を迫る交渉戦術とみられる。

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ストックホルム郊外の施設で5日に初めて顔を合わせた米国のビーガン北朝鮮担当特別代表と、北朝鮮の金明吉(キム・ミョンギル)首席代表。8時間半にわたる協議の直後、金氏は大使館前で米国を非難し責任を押しつける声明を読み上げた。

米国との協議後に声明を読み上げる北朝鮮の金明吉首席代表(5日、ストックホルム)=聯合・AP

米国との協議後に声明を読み上げる北朝鮮の金明吉首席代表(5日、ストックホルム)=聯合・AP

さらに北朝鮮外務省は6日、朝鮮中央通信を通して「米国は自分たちの党利党略のため朝米関係を悪用しようとしている」と主張する報道官談話を公表した。米国が同意したとする2週間後の協議を否定し「対朝鮮敵視政策を完全かつ不可逆的に撤回する実際的な措置を取るまで協議する意欲はない」と強調した。

北朝鮮情勢に詳しい専門家は、北朝鮮側があらかじめ「決裂シナリオ」を準備していた可能性を指摘する。米大統領選を約1年後に控えるトランプ大統領の足元を見て強気に出た公算が大きい。

トランプ氏は短距離弾道ミサイルの発射を容認し、米朝対話を外交成果と位置づける。北朝鮮が米本土に届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)の実験を再開し、緊張が高まるような事態は避けたい。2日の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)発射はそれを意識した北朝鮮の脅しにもとれる。

実務者に就いた金明吉氏は対米交渉や6カ国協議に長く関わり、相手をじらす交渉にたけている。声明では「朝鮮半島の完全な非核化は、我々の安全を脅かし発展を阻害する全ての障害物が疑う余地なく取り除かれる時に可能だ」と高いハードルを設けた。

北朝鮮が固執するのは「段階的非核化」のプロセスだ。非核化措置の見返りに米国が安全の保障や制裁解除のカードを1枚ずつ切る手法だが、最終的には在韓米軍撤退や制裁完全解除を条件に持ち出すとの見方がある。

一方、米国が手ぶらで来たとの北朝鮮の主張に対し、米国務省は声明を出し「いくつかの新しい提案をした」と反論した。提案内容は公表しなかったが、提案の目的を「2018年6月のシンガポール共同声明にある4項目を進展させるため」とだけ説明した。4項目は新たな米朝関係の確立や、朝鮮半島の非核化をうたう内容で具体策には触れていない。

実務者協議に先立ち、一部には米国が「新たなアプローチ」をとるとの見方が浮上していた。米デジタルメディアのVoxは、北朝鮮が寧辺(ニョンビョン)核施設を閉鎖してウラン濃縮活動を停止する見返りに、制裁の一部緩和に応じる案を米国が検討していると報じた。国連安保理が決議した石炭と繊維の輸出禁止措置を36カ月間凍結する内容という。

ビーガン氏は米メディアに対し、米朝協議中は北朝鮮が核を含む大量破壊兵器の開発計画を凍結し、見返りに人道支援を提供する案が考えられるとの認識を示したことがある。5日の米朝協議で案を提示したかは不明だが、全面的な非核化まで制裁の解除には応じないとする方針と両立可能な譲歩策を検討しているとみられる。

トランプ氏は金正恩(キム・ジョンウン)委員長との良好な関係を誇っている。4度目の米朝首脳会談の可能性を維持したい考えとみられる。

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