米朝協議、北朝鮮「決裂した」 米は継続に期待
【ワシントン=永沢毅】米国と北朝鮮は5日、スウェーデンの首都ストックホルムで非核化を巡る実務者協議を開いた。北朝鮮は協議後、米国の姿勢に変化がみられなかったとして「交渉は期待に沿わず、決裂した」との認識を表明した。これに対し、米国は北朝鮮の発言を「議論の中身を反映していない。良い議論ができた」と反論し、2週間後の再協議に前向きな姿勢を示した。
米朝の実務者協議は2月以来で、ストックホルム郊外の施設で8時間超に及んだ。事実上の物別れに終わったことで、非核化とその見返りを巡る両者の溝の深さが改めて浮き彫りになった。北朝鮮の非核化への道筋は不透明さを増している。
北朝鮮の首席代表を務めた金明吉(キム・ミョンギル)氏は協議後、北朝鮮大使館で記者団に「米国が旧態依然とした立場と態度を捨てられていない」と主張した。「米国は柔軟なアプローチを示唆し、期待を高めた。だが交渉の席に手ぶらで来て私たちを大きく失望させ、熱意をそいだ」と非難した。
同氏は核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験の凍結などに米国は見返りを提供すべきだと強調。「米国が誠意ある回答をすれば、次の段階の非核化措置のための本格的な議論に入ることができる」と述べ、交渉を一時中断して年末まで熟考を促すとした。
一方、米国務省はその後に声明を発表し「米国は創造的なアイデアを持ってきたし、良い議論ができた」と反論した。非核化や新たな米朝関係の構築など初の米朝首脳会談で合意した項目の進展に向けた「いくつかの新しい提案を説明した」とした。
米国はスウェーデン政府が提案した2週間後に米朝が再協議するとの案に同意し、北朝鮮に同意を求めた。北朝鮮側がこの提案にどう反応したかは不明だ。
これに先立ち、ポンペオ国務長官は5日「私たちはいくつかのアイデアを携えている」と述べ、膠着打開に向けた提案をする可能性を示唆していた。同時に「今回の協議がこれから数週、数カ月にわたる対話の道筋をつくるよう望んでいる」と期待感を示した。訪問先のギリシャでの記者会見で語った。
米国は北朝鮮が全面的な非核化に取り組み、その見返りに米国が制裁の完全な解除に応じる「ビッグディール」(大きな取引)を志向している。非核化の進展に応じて制裁を緩和する「段階的な非核化」を求める北朝鮮との溝は深く、膠着が続く要因となってきた。