関電ずさん統治 30年続いた甘え、監査役も機能せず

2019/10/5 2:00
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関西電力の役員ら20人による金品受領問題は、原子力発電所の立地する福井県高浜町の元助役らと関電側の不透明な資金の流れを浮き彫りにした。同社監査役が実態を把握しながら、取締役会への報告を怠っていたことも判明。30年以上にわたり続いたとされる電力会社と地元有力者の相互依存の背景には、ガバナンス(企業統治)のずさんさも透けて見える。

元助役からの金品受領で記者会見する関西電力の岩根社長(右)と八木会長(2日、大阪市福島区)

元助役からの金品受領で記者会見する関西電力の岩根社長(右)と八木会長(2日、大阪市福島区)

「原発運営に支障を及ぼすリスクがあった。呪縛から逃れられなかった」。2日の記者会見で岩根茂樹社長は高浜町元助役、森山栄治氏(今年3月に90歳で死去)との関係を苦渋の表情で語った。

森山氏は1969年、高浜町に入庁。75年に収入役となり、87年までの約10年間助役を務めた。高浜原発3、4号機の誘致などに尽力したとされる関電の"恩人"だ。

関電は元助役の退職後も良好な関係構築に努め、元助役は関電幹部らとの付き合いを維持することで地元での影響力を誇る"もたれ合い"の構図が生まれたとみられる。

元助役は地元で原発関連事業に強い影響力を持つとされ、関電幹部らとの面会ごとに金品を持参した。計約3億2千万円相当の金品を受け取っていた幹部の多くは受領時、原子力事業本部や高浜原発に所属していた。原発を統括し、立地地域対応も担う同本部などがターゲットとされた形だ。

社内で元助役に接する方法は口頭で後任へと引き継がれ、受け取った金品は個人で処理することが原則とされた。金品について組織としての対応は取らずじまいだった。

岩根社長らは「返したくても返せず、我慢を重ねてきた」と説明するが、関西大の松本祥尚教授(監査論)は「真実が次々と明らかになり、関電の説明は額面通り受け取れない」とする。

元助役への丁重な対応には原発再稼働への思惑が透けて見える。11年の東日本大震災を受けて国内では全ての原発が停止。原発の比重が大きい関電にとって再稼働は深刻な課題だったが、実現には立地する地元の理解が不可欠。八木誠会長は11年以降の元助役との関係について「再稼働に向け、安全対策工事が多くなりエスカレートした」と会見で説明した。

関電は元助役との面談を増やし、発注工事の情報を伝えた。同時期、元助役と関係がある建設会社「吉田開発」(高浜町)の受注高は伸びた。受注件数は17年末までの約3年で121件、うち18件は入札を伴わない「特命発注」だった。

不透明な関係を長年、放置した関電が方針を変えたのは、18年1月に吉田開発へ入った国税局の強制調査がきっかけだった。翌2月に岩根社長や八木会長ら6人分の金品をまとめて元助役へ返却、同7月に社内調査委員会を設立し調査を始めた。

報告書は同9月にまとまった。岩根社長に加え、監査役会も同年秋に実態を把握した。会社法で監査役は経営などに不当行為があると認めた場合、取締役会への報告義務がある。同社監査役会はこの問題を取締役会に報告せず、経済産業省へも伏せられたままだった。

19年9月の問題発覚後も詳細の説明を拒み、批判を受けて10月2日にようやく報告書を公表した。菅原一秀経産相は「全く報告がなかったことが信じられない」と不快感を示し、筆頭株主の大阪市の松井一郎市長は「金品を受け取った人全員が責任を取るべきだ」と役員の刷新を求めている。

企業の危機管理に詳しい結城大輔弁護士は「重大な不祥事の疑いが把握された時点で、第三者委員会による調査が必要だった。取締役会に共有せず、公表も見送った対応は隠蔽を図ったとみられても仕方がない」と述べた。

(村岡貴仁)

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