世界文学としての中島敦 生誕110年で文学展

文化往来
2019/10/10 2:00
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今年は作家の中島敦(1909~42年)の生誕110年に当たる。中国古典を題材とした「李陵(りりょう)」、南洋を舞台にした「光と風と夢」などの作品が今に読み継がれている。その生涯をひとつの旅に見立ててたどる文学展が神奈川近代文学館で開催中だ。

教員時代の中島敦(神奈川近代文学館蔵)

教員時代の中島敦(神奈川近代文学館蔵)

中島は漢文教師の父を持ち、漢詩文の素養を身につけた。南洋庁の役人としてパラオ赴任中の32歳のときに文芸誌に作品を発表。だが翌年、持病のぜんそくが悪化し世を去った。同展の編集委員を務めた作家の池澤夏樹氏は「中島敦は想像力による旅と実際の旅を軸にしながら、日本人・日本文学を超えた普遍性を持つ作品を残した。世界文学的視野を持ち、別の言語でも名作と評価されうる力を持つ」と話す。

展示課職員の斎藤泰子氏は「中島は漢文、英語、ドイツ語に通じ、世界文学を吸収した。『山月記』の古代中国、『文字禍』のアッシリアなど世界をテーマに作品を生み出した」と中島を「世界文学の作家」ととらえるゆえんを語る。

作品は実際に多数の言語に翻訳され、中国語版の「李陵」は彼の没後2年の44年に、日本での書籍化に先駆けて出版された。また南洋ものはポストコロニアリズム(植民地主義批判)の視点からも研究が進んでいる。現代の創作者にも影響を与えており、円城塔が中島の短編に触発されて小説「文字渦」を発表したのをはじめ、野村萬斎が舞台化したり、文豪をキャラクター化した漫画「文豪ストレイドッグス」で描かれたりと、多彩な広がりを見せる。展覧会ではそんな、今に生きる中島敦も紹介する。

展示品のひとつ、中島敦が先輩作家・深田久弥に原稿を託す際、挨拶をしたためた名刺(神奈川近代文学館蔵)

展示品のひとつ、中島敦が先輩作家・深田久弥に原稿を託す際、挨拶をしたためた名刺(神奈川近代文学館蔵)

作家で同館館長の辻原登氏は「漱石や鴎外を中心とする近代日本文学の最後にいたのが中島敦。文学史的にとても重要な位置にいる」と話す。11月24日まで。

(桂星子)

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