イルカのトレーナー、練習重ね心の絆披露
匠と巧

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2019/10/7 7:01
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アドベンチャーワールド(和歌山県白浜町)といえばパンダが有名。だがイルカも負けてはいない。約1000平方メートルのプールで10頭を超えるイルカやクジラが一斉に空中をジャンプするショーは息をのむ迫力だ。国内有数の水準といわれるショーに備え、どのような練習をしているのか。

トレーニング用の棒「ターゲット」を使い、イルカに動きを指示する弓削ほたるさん=大岡敦撮影

トレーニング用の棒「ターゲット」を使い、イルカに動きを指示する弓削ほたるさん=大岡敦撮影

ショー終了後の夕方。観客のいないプールで、トレーナーの弓削ほたるさん(31)がイルカ2頭の練習を始めた。この日繰り返したのは、水中からジャンプして後ろ側に宙返りする「バックフリップ」という技だ。

弓削さんが手に持つのは長さ5メートル程の竹の棒。先端には、イルカが追うように訓練されている「浮子」と呼ばれる直径約13センチメートルの球がぶら下がっている。

弓削さんはプールサイドに立ち、水面から3~4メートルの高さに浮子を掲げる。イルカが浮子に向かってジャンプすると、巧みに棒を操り浮子をイルカの背面に回り込ませる。イルカは口先で浮子を追いながら体を後ろにそらし、そのまま1回転半して頭から着水した。

練習を重ね、最終的に浮子なしでも技ができるようにするのが目標だ。バックフリップを習得するには1~2年の練習が必要だという。ただ一番重要なのは、いかに浮子を操るかではなく「イルカと信頼関係を築くこと」だという。

技ができれば餌をあげて褒める。餌をあげ忘れるとイルカは「水中から顔を出さなかったりして、すねる」。かといって、いつも餌をあげていると「軽く見られる」。個々のイルカの技量を的確に把握し、その時点でできる最高度の技に成功したときに餌をあげなければならない。

この日の練習で、もう1頭のイルカは1回転しかできず尾びれから着水した。ただ弓削さんは「いつも1回転できないのに今日はできた」と判断、餌をあげて褒めてあげた。トレーナーによって褒める基準が違うとイルカが混乱するため、個々の技量についての情報共有も頻繁に行う。

ショーの目玉である一斉ジャンプでも、カギを握るのは個々の特性の把握だ。サインへの反応が遅いイルカには早めに指示を出すなど、サインのタイミングを微妙にずらすことでジャンプの瞬間をそろえる。

イルカと遊び「この人といると楽しい」と思ってもらうことも心がける。弓削さんは週2~3回、練習後にプールに入り、一緒に泳いだり抱きついたりする。

弓削さんは2008年の入社以来、大半をトレーナーとして過ごしてきた。ショーにも出るほか、餌づくりからイルカの健康管理、プールの掃除までこなす。現在は新人も指導する。

新人が一番落ち込むのもイルカと意思疎通がうまくいかないときだ。「私も2~3年、言うことを聞いてくれないことがあったよ」。弓削さんは自分の経験も話ながら共に絆を深める策を練る。イルカがショーで見せる豪快なジャンプは、長い時間をかけて培ったトレーナーへの信頼の証しだ。(細川博史)

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