発注工事7割で情報提供 関電、概算額など元助役に
関西電力の役員ら20人が福井県高浜町の元助役、森山栄治氏(今年3月に90歳で死去)から金品を受領した問題で、関電が元助役と関係の深い建設会社「吉田開発」(同町)に発注した113件の工事のうち、7割超に当たる83件について、元助役に概算額などの工事情報を事前提供していたことが4日、関電への取材で分かった。

関電は2日の記者会見などで、吉田開発への発注プロセスに不正はなかったと説明しているが、今後設置される第三者委員会の調査で改めて焦点になりそうだ。
関電の社内調査で、原子力事業本部は2014年9月から17年12月、吉田開発に22件の工事を発注し、うち16件で関電が元助役に工事情報を事前提供していたことが判明した。吉田開発がゼネコンなどを通じて間接的に受注した91件の工事についても、このうち67件で関電は工事情報を元助役に提供していたという。
元助役から面談要請があった場合、関電の担当者は総務部長などを通じて土木建築部門などに情報を確認。各部門が工事量や概算額を算出して資料や関係データを用意し、元助役に提供していたという。
関電は「精度の低い工事の概算額であり、地域重視の姿勢を理解してもらうためだった。吉田開発に情報を提供することはなかった」と説明。ゼネコンなどに対しても「個別企業を下請け先として使うよう指示したことはない」と強調する。
元助役と吉田開発の担当者が同席して面談するケースもあったが「情報提供の場面では業者は席を外していた」という。面談の際に「(元助役は)かなりの頻度で金品を持ってきていた」というが、関電は「情報提供の見返りという認識はなかった」と説明している。
社内調査報告書は「他の(発電所)立地地域の情報提供先に比べて、より詳細な情報が提供されている」と指摘。工事概算額などを伝えた行為について「公平・公正に関し疑義を招きかねない」とした。
報告書などによると、同社は13~18年度、吉田開発に対し、元請け業者を通じたものも含め約64億7千万円分の工事などを発注。一方、税務当局の調査で、吉田開発は工事受注に関する手数料として元助役に約3億円を支払ったことが判明している。
吉田開発が関電から受注した工事は、入札を行わない「特命発注」が多かった。特命発注は14~17年に18件あり、関電は「地元対応に精通していることなど考えて発注した」と説明している。