違法投稿削除巡るEU決定、フェイスブックに難題

2019/10/4 10:22
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フェイスブックは言論の自由と利用者の権利保護の両立を求められる(米カリフォルニア州メンロパーク市の本社)

フェイスブックは言論の自由と利用者の権利保護の両立を求められる(米カリフォルニア州メンロパーク市の本社)

【シリコンバレー=奥平和行】欧州連合(EU)が米フェイスブックなどの大手インターネット企業に対し、違法コンテンツの削除で従来よりも厳しい対応を求める。各社は人員の増強や人工知能(AI)の活用でコンテンツの監視を強めているが、制約が増えるととにより負担が増す懸念が高まる。「言論の自由」と利用者の権利保護の両立も重い課題だ。

EUの最高裁判所にあたるEU司法裁判所が3日、加盟国の裁判所がフェイスブックなどに対して違法コンテンツの削除や公開停止を命じることができるとの判断を示した。オーストリアの環境政党の幹部が2016年、フェイスブックに対して自身を中傷する投稿を削除する訴えを起こしており、原告の主張に沿った判断を下した。

フェイスブックなどは従来、自社はコンテンツを共有するための情報基盤を提供しているにすぎず、その内容には責任を負わないとの姿勢だった。だが、16年の米大統領選におけるSNS(交流サイト)の不適切な利用などを機に批判が高まり、方針を転換。対策を強化してきた。

ただ、今回の判断に対しては懸念を示している。マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は3日、社内集会で「心配だ」と発言した。ひとたび違法と認定されたコンテンツと「同一」「類似」の内容を削除することを求めていることを問題視し、同氏や一部の識者は国外からの投稿も削除命令の対象とすることにも疑問を呈した。

フェイスブックはコンテンツの監視などを担当する人員を増やしてきた。だが、今回の判断は類似などと認定する際の基準が曖昧で、「当社や他社が(定義を明確にするために)訴訟を起こす可能性がある」(ザッカーバーグCEO)。監視をさらに強化することを求められると、負担が増す懸念も高まる。

言論の自由との利用者の権利保護の両立も大きな課題として浮上している。今回の判断に基づく命令が悪用されると、政治家などへの健全な批判が制限される可能性があるためだ。フェイスブックも「言論の自由に関してある国の判断が他国には及ばないという原則を弱めるものだ」(広報担当者)と批判している。

専門家の間には「EU各国の裁判所は抑制的に判断する」との楽観論がある一方、同様の動きが世界に波及するとの見方も出ている。プライバシーでは欧州の一般データ保護規則(GDPR)と類似したしくみ作りが各国で進んでいる。過剰な規制を防ぐためにもフェイスブックなどの情報基盤を提供する企業は透明性を高め、社会との対話を強化する必要がある。

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