NHK、問われる放送の独立性 かんぽ不正巡る報道

2019/10/3 21:00
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NHKの上田会長は経営委の番組への介入を否定した(東京都渋谷区のNHK放送センター)

NHKの上田会長は経営委の番組への介入を否定した(東京都渋谷区のNHK放送センター)

かんぽ生命保険の不正販売問題を伝えたNHKの報道を巡り、NHKの経営委員会が上田良一会長を注意したことについて、上田会長は3日、放送の独立性に問題はないとの見方を示した。ただ、NHKは日本郵政グループ側に事実上の謝罪文を出したほか、経営委員会の議事録に経緯の記載がなかったことも発覚している。公共放送のあり方に対する議論はなおくすぶっている。

上田会長は3日の記者会見で「自主自律が損なわれた事実はない」と述べた。経営委からの厳重注意は、日本郵政側に対するNHKの説明が不十分だったことに対するもので「番組編集とはまったく関係ない」とした。放送法32条は経営委が個別の番組に関与できないと規定しているが、違反はなかったとの立場だ。問題が浮上してから上田会長が公の場で発言するのは初めて。

NHKは2018年4月、「クローズアップ現代+(プラス)」でかんぽ生命の不正販売問題を報じた。放送後、郵政側が内容が偏向しているなどとしてNHKや経営委員会に対して抗議、10月にはNHK経営委が上田会長を厳重注意した。制作現場は続編を企画していたが、放送は日本郵政側が不正を認めた19年7月までずれこんだ。

NHKは上田会長ら執行部と、経営者や学者ら外部の有識者12人からなる経営委員会を中心に運営されている。経営委員会は経営方針を決めるほか、執行部を監督する役割も担う。

一連の問題では、NHKの日本郵政側に対する異常ともいえる配慮が浮かび上がった。経営委が個別番組を巡って対応したのも、放送部門のトップである放送総局長が郵政側に出向いて会長名の事実上の謝罪文書を手渡したのも異例の事態だ。

武田徹・専修大教授(メディア論)は「外部の注文が番組に反映されたのであれば、経営委の機能がはらむ潜在的な問題が表面化したことになる」と指摘する。経営委に連なる人脈を通じて恣意的な番組改編が行われかねないと警鐘を鳴らす。

情報公開の不十分さも浮き彫りになった。経営委の議事録は経営の透明性を確保するため、放送法で委員長に作成と公表を義務づけている。しかし経営委員会が上田会長を注意した昨年10月の議事録にはその事実は記載されていない。

放送法は第1条で放送の不偏不党や放送による表現の自由の確保を掲げている。報道の自由は社会全体として守るべき価値観だ。受信料で成り立つ公共放送として、放送の独立性に問題がなかったのか。NHKや経営委員会は改めて丁寧な説明が求められる。

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