イラク 生活苦で反政府デモ、19人死亡 混乱拡大も

2019/10/3 18:56
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【カイロ=飛田雅則】イラクの首都バグダッドなどで2日、2日連続で反政府デモがあり、参加者らを強制的に排除しようと試みた治安部隊と衝突した。失業問題など政府に不満を持つ若者が中心で、ロイター通信によるとデモ参加者と警官を合わせて19人が死亡した。アブドルマハディ首相が2018年10月に就任して以来、最大規模の抗議行動となった。混乱が続けばイラク戦争後の復興が遅れかねない。

イラクの首都バグダッドで2日、デモ隊と治安部隊が衝突した=ロイター

バグダッドや南部バスラなどで1日に始まった反政府デモは、治安部隊が催涙弾や実弾で強制排除に乗り出し、激しさを増した。デモ隊は封鎖された道路に繰り出し、投石やタイヤを燃やすなど抵抗。デモ隊と治安部隊が衝突し、多数の死傷者が出る事態となった。

経済学者のアブドルマハディ氏が政権を発足させてまもなく1年を迎えるが、デモ参加者は失業や公共サービスの不足、横行する汚職などの問題を解決できていないことに不満を爆発させた。政府は声明で衝突の犠牲者に哀悼の意を示したが、デモ隊の怒りが収まるか不透明だ。

イラクは多数派のイスラム教のシーア派と、スンニ派、クルド人の主に3つのグループからなる「つぎはぎ国家」といわれる。少数派のスンニ派だったフセイン元大統領はそれを独裁で強引にまとめてきた。

03年のイラク戦争後の混乱の多くは、シーア派主導の政権に対するスンニ派の反発が原因だ。14年に「国家樹立」を宣言した過激派組織「イスラム国」(IS)は、スンニ派の不満を吸収し勢力を拡大した経緯がある。シーア派の隣国イランはISの掃討を口実に介入して影響力を拡大し、シーア派中心の現政権に肩入れする。

現政権に冷遇されていると感じるスンニ派住民を中心に、イランへの反発は高まっている。今回のデモで一部の参加者は9月下旬に唐突に解任された軍テロ対策部門幹部のサーディ中将の写真を掲げ、不当な解任だと非難した。同中将はISとの戦闘を勝利に導いた立役者としてイラク国民の人気が高い。

イランが「同中将は米国と親密な関係にある」と問題視し、現政権に圧力をかけて更迭させたとの観測も浮上する。デモ参加者は内政への介入だとしてイランへの反発を強めており、デモ隊がイラン国旗を燃やしたとの報道も出ている。

イラクでは米軍が5千人規模で部隊を駐留させる一方、イランも傘下の民兵組織を置くなど影響力を競ってきた。9月にサウジアラビアの石油施設が攻撃を受けた問題で、米国とイランの対立は激化しており、イラクでも両国の緊張が高まる恐れがある。

イラクは17年12月にISとの戦いで勝利宣言し、戦闘で荒廃した国土の再建の途上にある。しかし戦後の復興体制は崩壊の危機に直面している。反政府デモが激化し、イラクが混乱に陥れば、中東情勢がさらに流動化する懸念がある。

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