一夫多妻時代のベトナムを生きた女性たち描く映画

文化往来
2019/10/9 2:00
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映画「第三夫人と髪飾り」の場面写真(C)copyright Mayfair Pictures.

映画「第三夫人と髪飾り」の場面写真(C)copyright Mayfair Pictures.

自然豊かな19世紀のベトナムを舞台に、富豪一族に嫁いだ14歳の少女を主人公にした映画「第三夫人と髪飾り」が10月11日から日本公開される。監督のアッシュ・メイフェアはベトナム生まれの女性。米国で映画制作を学び、この作品で監督デビューを果たした。ベトナムでは20世紀半ばまで一夫多妻が続き、物語は監督の曽祖母の体験をもとにしているという。

一人息子を産んだ上品な第1夫人、3人の娘を持つ第2夫人がいる。そこに14歳の少女は男児を産むことを期待され、嫁いでくる。一夫多妻を取り上げた作品によくある、夫人同士のあからさまな嫉妬や対抗心はない。「朝から晩まで家の仕事と子育てに追われ、嫉妬する時間もなかったと聞いた。思い込みを排して、当時の女性たちを描きたかった」と監督は語る。

アッシュ・メイフェア監督

アッシュ・メイフェア監督

一族の家には恋を諦めた女性使用人や、夫である第1夫人の息子から拒絶されてしまう少女の姿も。さまざまな境遇に置かれた女性たちの物語でもある。「私はベトナムの伝統を愛しているが、当時、伝統があるがゆえに苦しむ女性がいた。伝統と距離を置き、客観的な視点で表現しようと思った。彼女たちについてどう思うかは観客の判断に委ねたい」。第1夫人は監督の母、使用人は軍医との悲恋の経験を持つ乳母をモチーフにするなど、「これまでの私の人生にかかわりのあった女性たちをベースに、フィクションを交ぜ合わせて人物像を作り上げた」という。

ロケ地は世界遺産であるニンビン省チャンアン。絶壁の岩山が連なり、麓を川が静かに流れる。監督は撮影前の数カ月間、19世紀の暮らしを再現した古い家屋のセットで過ごし、脚本をさらに練り上げた。「雄大な自然に対して人間の小ささを表現したいと思い、このロケ地を選んだ。自然の静けさに身を置くことで、せりふの言葉ではなく映像で語りたいと実感した」という。

監督は14歳から英国、オーストラリア、香港、シンガポール、米国と外国を転々としながら育った。「どこにいてもよそ者だった。だが一方で、外国でアジア人女性として生きることについて洞察することもできた。こまやかに観察する目が養われ、それがアーティストとしての利点になった」とほほ笑む。ベトナムで生まれ、フランスで育ったトラン・アン・ユン監督が美術監修を担当している。

(関原のり子)

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