米欧の航空機紛争、関税合戦に 泥沼化には警戒も

2019/10/3 10:00
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【ワシントン=鳳山太成、ブリュッセル=竹内康雄】トランプ米政権は2日、航空機大手エアバスへの補助金が不当だとして欧州連合(EU)製品に報復関税を課すと表明した。世界貿易機関(WTO)を舞台に15年間続いてきた紛争は関税合戦に発展し、米欧の貿易摩擦が一段と激しくなる。ただ経済の減速懸念が広がる中で互いに対立の泥沼化は避けたい思惑もにじむ。

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「米国にとって大勝利だ」。トランプ大統領は2日、WTOが米国の主張を認めたことについて記者団に胸を張った。

WTOはEUの補助金が米ボーイングの販売減につながっていると指摘し、年75億ドル(約8千億円)分に関税を課すことを認めた。米通商代表部(USTR)はWTOの正式な手続きを待って18日に発動する。航空機に10%、ワインやチーズ、ウイスキーなど農産品や工業品に25%の関税を上乗せする。

EUは反発している。通商担当のマルムストローム欧州委員は声明で「米国がWTOから承認を得たとしても、対抗措置を選ぶのは近視眼的で非生産的だ」と主張した。EUも米国のボーイングへの補助金が不当だとしてWTOから報復関税の承認を待つ段階だ。2020年前半に算定額が公表される見通しで、対抗措置を打つ可能性がある。

今回の対応はWTOルールに従った措置で、保護主義を強めるトランプ政権が国内法を使って一方的に関税を課した鉄鋼・アルミニウムや、中国のケースとは異なる。関税の対象も対EU輸入額の2%弱と大きくはないが、航空会社や食品など米国の特定産業に打撃となるのは必至だ。

世界二大航空機メーカーを抱える米欧の対立は過去最大の通商紛争と呼ばれ、04年からWTOを舞台に長年続いてきた。組み立て産業の航空機は雇用を生み出す効果も大きく、国や地方が税制優遇や低金利融資など様々な形で支援するが、国産品を優遇するような補助金はWTOで禁じられている。米欧は互いに協定違反だと主張を曲げなかったため、最終手段の報復措置につながった。

米欧の言い分は真っ向からぶつかるが、双方とも航空機で米中貿易戦争のような全面対立を望んでいるわけではない。WTOは100%の関税を容認したが、米国は最大25%に抑えた。航空機部品は対象品目の原案から除いた。USTR高官は「産業界の意見を踏まえてこの規模にとどめた。協議で問題解決につなげたい」と語る。

そもそも今回の報復関税を発動しても、すぐにボーイングの業績回復につながるかは不透明だ。同社は新型の主力機「737MAX」の墜落事故の影響で業績が悪化しており、4~6月には旅客機の引き渡しが90機と前年同期の半分以下に減少。4~6月期決算では最終損益で約29億ドルの赤字を計上した。

自由貿易体制の堅持を掲げるEUとしても11月に欧州委員会の新体制が発足する前に、米国との摩擦激化は回避したいのが本音だ。マルムストローム氏は「お互いに関税を引き上げれば、双方の経済に悪影響をもたらすだけだ」と警告した。日米の貿易交渉はひとまず決着したが、米欧は進んでいない。同月には米国の自動車関税の引き上げを判断する期限を迎え、米側が対EUで攻勢に出ることを懸念する。

米中貿易戦争の収束が見えないなか、金融市場で貿易摩擦への懸念は根強い。WTOは1日、19年の世界のモノの貿易量の伸び率が前年比1.2%にとどまると大幅に下方修正したばかりだ。リーマン・ショックの影響で減少した09年以来、10年ぶりの低水準となる。米欧は自動車や農産品など多くの貿易摩擦を抱えており、世界経済の足かせとなるリスクは消えない。

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