スマートロックが活躍 再配達の削減や隠れ残業防止

2019/10/7 0:00
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スマートフォンで扉を開閉する「スマートロック」のスタートアップ企業が、人手不足など社会的な課題に成長の機会を見いだす。玄関への「置き配」を可能にして再配達を減らしたり、中小企業での働き過ぎを監視したり。普通の鍵が要らない利便性だけでは違いを生みにくく、新たな機能やサービスを生む競争となっている。

「住宅やオフィスの扉を軸にした経済圏をつくりたい」。ビットキー(東京・中央)の江尻祐樹最高経営責任者(CEO)はこう話す。社会の課題を解決するサービスを、ビジネスの成長につなげていく。

米ゴールドマンが出資

その一環として8月までに、物流大手セイノーホールディングスの子会社で、食品などを配送するココネット(同・中央)や、食材のインターネット通販会社ポケットマルシェ(岩手県花巻市)と提携した。

3社が今月から取り組む実験で、消費者はネット通販で買った商品をいち早く受け取り、物流会社は再配達を減らす。

消費者がポケットマルシェで商品を注文すると、ココネットが配送日時を教えてくれる。配達日時にだけ開けられる一時的な電子上の鍵を自分で発行する。配達員はこれを受け取って玄関を開け、荷物を置く。

配達員がいつ来て、いつ出て行ったかわかるように、解錠と施錠の時刻をビットキーのアプリで確認できる。

ビットキーはこの取り組みのほかにも、トヨタ自動車ソフトバンクが取り組む次世代移動サービス「MaaS(マース)」の企業連合に参加している。MaaSサービスのなかで、人や時間を指定する鍵システムを活用する見込みだ。

ビットキーは4月に住宅のスマートロックを発売し、すでに5万台を受注した。19年内に20万台を出荷する計画だ。米ゴールドマン・サックスや投資会社マーキュリアインベストメントはこのほど22億円出資した。

働き方改革が追い風になりそうだというのはQrio(キュリオ、同・渋谷)。19年度の販売台数の計画は前年度と比べ5割増だという。

小規模な会社や個人事業主からの受注拡大を期待している。国が進める働き方改革の一環で、時間外労働の上限規制が20年4月から中小企業にも適用されるからだ。

同社は9月、スマートロックの企業向けサービス「カギカン」の機能について、人の出入りを管理者にメールで通知できるようにした。

米国ではM&Aも

大企業では入退室を電子的に管理することが一般的になったが、中小では合鍵を使うケースも多い。従業員が働いた時間を自分で申告するようにしても、うまくいかない現実がある。同社は「土日にこっそり働く『隠れ残業』を防ぐ需要がある」と説明する。

「以前はセキュリティー目的が多かったが、勤務時間や残業代を正確に把握したいというニーズが増えた」。企業向けスマートロックのフォトシンス(同・港)の河瀬航大社長はこう話す。他社の勤怠管理システムとの連携を増やしていく。

米国では成長を巡る競争が激しくなり、M&A(合併・買収)が起きている。12年に創業し、扉に後付けするタイプを提供している米オーガスト・ホームは、スウェーデン鍵・ドア大手のアッサ・アブロイが買収した。オーガストが有望と判断されてのことで、同社は米エアビーアンドビーと提携し、民泊の部屋を借りる人がスマホ上で鍵を受け取れる仕組みを提供している。

日本も市場は伸びると見込まれ、富士キメラ総研は25年の国内住宅用スマートロック市場が17年の2倍を超す8万3千台になると予測した。カナダのキーカフェなども日本に進出しており、一定の普及は見込まれる。

スマートロックの事業はセキュリティー性能を高める技術的なハードルがある一方、機器やアプリの開発の参入障壁は比較的低いといわれる。他社との連携などで、付加価値を生みだす動きが広がる見通しだ。

スマートロック スマートフォンやICカードで住宅やオフィスの扉を開け閉めできる。扉に専用機器を後付けして開閉させる場合が多い。解錠できる時間や人を限定したり、記録を付けたりできる。2010年代に入って相次ぎ登場し、世界で利用が進んでいる。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」の機器のひとつ。

(山田遼太郎、鈴木健二朗、潟山美穂)

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