カルティエ展 杉本博司が見せる宝石の美

文化往来
2019/10/7 6:00
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洞窟の中で探索するように宝石を鑑賞できる(東京都港区の国立新美術館、撮影:小野祐次 (C)N.M.R.L./ Hiroshi Sugimoto + Tomoyuki Sakakida)

洞窟の中で探索するように宝石を鑑賞できる(東京都港区の国立新美術館、撮影:小野祐次 (C)N.M.R.L./ Hiroshi Sugimoto + Tomoyuki Sakakida)

暗闇のなか、専用に作られた台座の上で希少な宝石がまばゆい光を放つ――。仏カルティエの宝飾品を集めた「カルティエ、時の結晶」展が東京・六本木の国立新美術館で開催中だ。現代美術家の杉本博司と建築家の榊田倫之による建築設計事務所、新素材研究所が会場構成を手掛けた。「地底に迷い込んで宝石と巡り合う。インスタレーションのような展示の中で新たな宝石の魅力を味わってほしい」と杉本は話す。

1970年代以降に作られたものを中心に、約300点の時計や宝飾品が出展されている。カルティエが現代の作品に焦点を当てた展覧会を開くのは初めて。出展作のおよそ半数は個人所有のものという。

時計の展示では、暗闇に光が降り注いでいる様子を布で表現した(東京都港区の国立新美術館)

時計の展示では、暗闇に光が降り注いでいる様子を布で表現した(東京都港区の国立新美術館)

会場に入ると、まず暗く細長い通路の先に高さ約3.5メートルの大きな時計が置かれている。よく見ると針は反時計回りに動いている。杉本の新作「逆行時計」だ。08年にミラノで作られた機械式の時計を使った。時間を巻き戻すように動く時計から、「宝石も時を遡れば長い時間をかけて結晶化した鉱物である」という杉本のメッセージが伝わってくるようだ。

こうした時間の流れを意識させる仕掛けが、展示のいたるところに垣間見える。きらびやかな宝飾品が置かれているのは、樹齢1000年を超えるような屋久杉の木材の上だったり、火山からの噴出物が凝結してできた凝灰岩を積み上げた洞窟のような空間だったりする。

もともとはこうした自然の中から発見された鉱物が、一流の職人の手によって磨かれ、加工され、今のような宝飾品に変わってきたという歩みに鑑賞者は思いをはせるだろう。カルティエのデザインの変遷を楽しみながら「物質の起源へと遡っていく」(杉本)ぜいたくな空間に仕上がっている。12月16日まで。

(岩本文枝)

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