甘利自民税調会長「働き方による差是正」、退職金課税の見直し議論
自民党の甘利明税制調査会長は2日の日本経済新聞などのインタビューで、働き方や勤めた年数で税負担に差が出る所得税のしくみを改める考えを示した。勤めた期間が20年を超えると控除額が大きくなる退職金課税の見直しを検討課題にあげた。「日本企業の終身雇用や年功賃金もずいぶん変わってきた。働き方で損得が出るのは避けないといけない」と語った。

退職金など退職所得への課税は終身雇用を前提としている。甘利氏は転職を繰り返す人の増加などを念頭に「ライフコースの変革に向け適切な税体系がどうあるべきか議論したい」とし、2020年度税制改正で所得税の見直しを議論する考えを示した。
勤務期間が長いほど有利な退職金課税のしくみは年金への課税にも応用されており、確定拠出年金の受け取り方が分割ではなくまとめてもらう方式に偏る要因になっている。甘利氏は高齢者の資産形成や退職後の生活設計が税制で左右されないしくみに改めるべきだとの見解を示した。
自動車税制については「走行距離に見合った新たな課税体系にすべきだという議論はある。将来課題として党税調でも議論は必要だ」と話した。ガソリン車から電気自動車(EV)などに買い替えが進み、所有からシェアへと使い方も変わっていると説明した。
消費税率が1日に10%に上がったことを巡り「予算や税制も国内外の状況を見極めながら機動的な対応が必要だ」と話した。安倍晋三首相が21年9月までの党総裁任期中の10%超への再引き上げを否定したことに関し「首相と同じく10%の枠内でできるだけ済む努力を続けていく」と同調した。党税調で議論しない考えを改めて示した。
内部留保を使った新規事業への投資を促す税制の創設を20年度税制改正大綱に盛る考えを重ねて示した。新技術を持つ企業に対するM&A(合併・買収)への税制優遇などを想定する。「欧米では成熟企業が社外の力を取り込み創業時の勢いを取り戻す」と指摘した。