米製造業、2カ月連続「不況」 9月景況感

貿易摩擦
2019/10/2 10:48
保存
共有
印刷
その他

米製造業景況感は約10年ぶり低水準に落ち込んだ(ノースカロライナ州にあるキャタピラーの組み立て工場)=ロイター

米製造業景況感は約10年ぶり低水準に落ち込んだ(ノースカロライナ州にあるキャタピラーの組み立て工場)=ロイター

【ワシントン=河浪武史、ニューヨーク=中山修志】米製造業の景況感が一段と後退している。9月の景況感指数は10年ぶりの低水準に悪化し、2カ月連続で好不況の境目となる「50」を下回った。中国との貿易戦争で輸出向けの受注が下振れし、生産活動に陰りが出ている。製造業の雇用の拡大ペースも鈍ってきた。世界で「一人勝ち」だった米経済。この先は個人消費の耐久力が1つの焦点となる。

米サプライマネジメント協会(ISM)が1日発表した9月の米製造業景況感指数は47.8となり、金融危機の直後だった2009年6月以来、10年3カ月ぶりの低い水準に落ち込んだ。市場予測は50.1だったが、前月から1.3ポイント下落した。好不況の境目である50を2カ月連続で下回り、製造業の景況感に限っていえば「不況」を示唆する水準が続いた。

ISM製造業指数は米景気の先行指標として知られ、米連邦準備理事会(FRB)も政策判断で重視する。項目別で落ち込みが目立つのは、外需の先行きを占う「新規輸出受注」だ。指数は前月より2.3ポイント低下して41.0となった。6月時点では50.5と「好況」の水準をギリギリで保っていたが、3カ月で10ポイント近く下落した。

輸出の低迷は貿易戦争の影響が大きい。関税合戦が中国や欧州の景気減速を引き起こし、米国の輸出は4月以降、4カ月連続で前年実績を割り込んでいる。建機大手キャタピラーは4~6月期にアジア市場での建機の売上高が前年同期から2割減少した。中国メーカーとの低価格競争にも見舞われ、6四半期ぶりの最終減益となった。

米中両国は10月10日に2カ月半ぶりに閣僚級協議を開き、貿易戦争の打開策を探る。現時点でトランプ米政権は15日に2500億ドル(約27兆円)分の中国製品への追加関税をさらに5%上乗せして30%に引き上げる予定だ。貿易戦争が終結するメドは立っていない。

ルイジアナ州の鉄鋼メーカー、バイユースチールは9月末に連邦破産法11条の適用を申請した。製鉄所を閉鎖して400人を解雇する。地元紙によると、鉄鋼需要の冷え込みに加え、トランプ政権の鉄鋼関税で鉄スクラップの輸入相場が上昇し、採算が悪化していた。

化学大手のケマーズは中国の報復関税の影響で化学原料の輸出が減少している。9月にウェストバージニア州の工場で25%に当たる60人を一時解雇した。

米製造業は国内総生産(GDP)全体の1割を占めるにすぎず、非製造業は底堅さを保つ。失業率は3.7%と半世紀ぶりの低い水準で、8月の小売売上高は前年同月比4%増えるなど、個人消費も全体でみれば底堅く推移している。

その頼みの内需にも陰りがみえる。17年末に成立したトランプ政権の大型減税は効果が早くも一巡しつつあり、米新車販売は前年割れが避けられない見通しだ。

全米自動車労組は長期ストに突入し、1日1万台の生産が止まっている(テネシー州のGM工場)=ロイター

全米自動車労組は長期ストに突入し、1日1万台の生産が止まっている(テネシー州のGM工場)=ロイター

大規模ストライキが自動車産業に追い打ちをかける。全米自動車労組(UAW)はゼネラル・モーターズ(GM)が閉鎖した工場の再開と賃上げを求め、長期ストに突入した。米自動車生産の2割に当たる1日1万台の生産が止まり、数万社の部品メーカーが生産調整を余儀なくされている。

ミシガン州をはじめ、自動車や鉄鋼など製造業が集積する米中西部は大統領選の激戦州だ。製造業の景況悪化が20年の選挙に及ぼす影響は無視できない。トランプ大統領は1日、景況感指数の発表後、すぐさま「FRBのドル高容認は米製造業に悪影響だ。政策金利は高すぎる。ひどいものだ!」などとツイッターで表明して金融緩和の圧力を強めてみせた。

FRBは7月末、9月中旬と2会合連続で利下げを決断したばかりだ。製造業の景況悪化が止まらないのは貿易戦争の逆風が強まっているためだが、トランプ氏は矛先をFRBに向ける。市場でも1日、10月末の次回会合で利下げを織り込む割合が4割から6割に急伸した。FRBに対する政権と市場の包囲網が再び狭まってきた。

FRB内には年内の追加利下げに慎重論が残る。焦点は製造業の景況悪化が雇用情勢にどう響くかだ。実際、19年に入って製造業の就業者数の増加幅は月平均6千人にとどまり、18年の同2万2千人から急速に鈍っている。雇用不安が台頭すれば、堅調な個人消費を腰折れさせかねない。FRB内の早期利下げ論が再び強まる可能性もある。

保存
共有
印刷
その他

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]