19年の世界貿易、大幅下方修正で10年ぶり低さ WTO
【ジュネーブ=細川倫太郎】世界貿易機関(WTO)は1日、2019年の世界のモノの貿易量の伸び率は前年比1.2%にとどまるという予測を発表した。4月公表の2.6%を大幅に下方修正した。リーマン・ショックの影響で減少した09年以来、10年ぶりの低い伸び率になりそうだ。米国と中国の貿易戦争や、英国の欧州連合(EU)からの離脱を巡る不透明感が世界貿易に影を落としていると分析した。

ほぼすべての地域のモノの輸出の伸び率が18年から低下する。北米は4.3%から1.5%に、アジアが3.8%から1.8%になる。米中貿易戦争に収束の兆しが見えず、個人消費や投資への悪影響が広がっている。

英国が10月末に予定するEUからの離脱も不安要素として強調した。欧州の輸出の伸び率は0.6%と最も低く、仮に英国が合意なしでEUを離脱すれば「欧州は重大な影響を受ける」と警鐘を鳴らした。
20年の伸び率見通しも2.7%と、従来の3.0%から引き下げた。
WTOのアゼベド事務局長は「貿易戦争は企業の投資を遅らせるなど不確実性を高めている」との声明を出し、自由貿易を柱とするWTOの枠組みで問題を解決するよう加盟国に促した。
19年の世界の実質成長率は2.3%と予測した。国境をまたぐモノの貿易量の伸び率が経済成長率を下回る「スロートレード」に陥る見通しだ。