5G時代、変わる格安スマホ 動画特化など個性豊かに

日経産業新聞
コラム(ビジネス)
2019/10/2 2:00
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NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

主に格安スマートフォン事業を展開するMVNO(仮想移動体通信事業者)の業界団体が、新たな事業体の構想を掲げた。「VMNO(仮想通信事業者)」と呼ぶ形態だ。次世代通信規格「5G」時代に、あらゆるモノがネットにつながるIoTなど多彩なサービスを容易に提供できるとみている。新事業体は2022~23年ごろのサービス開始を想定している。

「これまでMVNOは低価格中心のサービスを提供してきたが、今後はより多種で高度なサービスを提供するVMNOに進化する」。総務省で20日に開催された有識者会議で、MVNOの業界団体であるテレコムサービス協会(東京・中央)MVNO委員会の島上純一委員長はこのように述べた。

現在、主に格安スマホを展開するMVNOは、携帯大手の無線ネットワークを借りることでサービスを提供している。日本では01年から本格的に参入が始まった。

第3世代携帯電話(3G)、そして第4世代携帯電話(4G)時代に発展したMVNOだが、島上委員長は「本格的な5G時代の到来に伴って新たな可能性が見えてきた」と指摘する。

5Gが本格化する時代の携帯各社のネットワークは、「スライシング」と呼ばれる機能によって、様々な用途ごとにカスタマイズした通信を仮想ネットワークとして提供できるようになる。例えば一つの物理ネットワーク上に、動画配信に向く高速・大容量の仮想ネットワークや、IoTに最適化された低速だが低遅延な仮想ネットワークを提供できる。

通信ネットワークを仮想的に分割するスライシングが実現すれば、従来のMVNOとは異なる2つの事業者の形が考えられるという。一つは「ライトVMNO」と呼ばれる事業形態だ。ライトVMNOは携帯大手各社が提供するスライシング機能の一部を、外部事業者が制御できるようにする。これにより格安スマホはもちろん、IoTや法人向けなどにも高い自由度を持ったサービスの提供が可能になる。

もう一つは「フルVMNO」と呼ぶ事業形態だ。こちらは外部の事業者自らが、携帯各社から独立したスライシング機能を持つ基幹網を作り、複数の携帯各社の無線網と接続する形態となる。自由度の高いサービス提供に加えて、多数の無線網を活用することで、災害などにも強いサービスとなる期待がある。

VMNOが実現した場合、例えば遠隔医療など特定の用途に最適化したネットワークサービスを柔軟に提供可能になる。島上委員長は「個人向けだけでなく、法人向けにも多彩なサービスを実現できる。日本政府が掲げる(先端技術を使って社会課題を解決する)『ソサエティ5.0』の実現に貢献できる」と語る。

新構想の実現に向けては、制度整備が不可欠だ。これまでMVNOは、携帯各社からネットワークを借りる対価として接続料と呼ばれるレンタル料を支払ってきた。ライトVMNO、フルVMNOの形態は、従来のレンタル料の考え方だけでは整理がつかない要素が含まれている。

携帯大手がスライシング機能を提供するのは22~23年ころと見込まれている。VMNO構想が現実化するのも同じ時期になるだろう。それまでの間、格安スマホの次を巡る議論がさらに深まっていきそうだ。

■成長鈍化、料金競争は限界
 年率3割近い成長を遂げ、飛ぶ鳥を落とす勢いだった格安スマホ市場も今は成長に陰りが見える。携帯大手の値下げの影響で、携帯大手からの顧客流入が減っているからだ。調査会社のMM総研(東京・港)の調べによると携帯電話市場に占める格安スマホの契約数比率の伸びは2年連続で鈍化している。
 同社の調べによると、シェア上位企業は軒並み携帯大手傘下で、携帯大手がコントロールできる市場になりつつある。携帯大手の攻勢によって、もともと薄利多売だった格安スマホのコスト構造が事業者の首を絞め始めている。
 「格安スマホ事業は携帯大手へ支払う回線レンタル料の負担が売り上げの6~7割を占める。販促費を重ねると利益が出ず、単体事業で採算を取るのは難しい」と元格安スマホ事業者幹部は指摘する。異業種から格安スマホへ参入する企業も相次いだが「相乗効果が薄く、採算性が悪いと判断した企業が撤退を考えている」(同)。楽天がDMMの格安スマホ事業を買収したように、事業者の合従連衡は今後も進みそうだ。
MVNO委員会がVMNO構想を掲げたのは格安だけに頼った事業構造から脱却し、新たな成長に向けた道筋を作りたいという狙いも見える。

(企業報道部 堀越功)

[日経産業新聞 2019年9月30日付]

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