お堀でスイム、浄化で可能に 大阪城トライアスロン
とことん調査隊

関西タイムライン
コラム(地域)
2019/10/1 7:01
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秋風がさわやかな9月22日、大阪城の東外堀が巨大なプールと化した。特設の青い飛び込み台から一斉に入水したのはトライアスロンの選手たち。堀の石垣を横手に見ながら派手に水しぶきを上げ、前に進んでいく。実に気持ちよさそうだが、やはり堀で泳げるなんて驚きだ。どうして実現できたのだろうか。

2017年に始まった大阪城トライアスロンは大阪城公園(大阪市中央区)が舞台。東外堀を泳ぎ、公園周辺を自転車で駆け、天守閣を眺めながら走る。17年、18年は6月開催だったが、第3回の今年は9月に変更。20カ国・地域首脳会議(G20サミット)が6月に大阪であったためだ。

大会組織委員会は毎年、水質検査で安全性を確認。今年も大会の4日前、東外堀の4カ所で採水し、国際トライアスロン連合(ITU)が定める水素イオン濃度(pH)、大腸菌数、腸球菌数、藍藻類などの基準値をすべてクリアしていることを確認した。

実際に泳いだ選手は「海でのスイムより肌がべたべたしない」と好意的な評価。盛夏を経て透明度は低かったが、大阪市旭区の大学生、宮本恒平さん(21)は「気になるにおいもなく、自分も含め『案外、悪くない』というのが周囲の選手の感想」と語る。

そもそも堀で泳ぐという発想は、どこから来たのか。大会組織委員会に聞くと「実は20年近く前からアイデアはあった」(木下貴之事務局次長)。大阪市が08年夏季五輪の招致活動をしていた00年、当時のITU会長が視察の際に「大阪城でやったらどうか。お堀でのスイムはユニークだ」と関心を示したという。

大阪城には天守閣に近い内堀と、それぞれ東西南北の名を冠した外堀とがある。東外堀は江戸時代初期に築造。大正から平成初期までは埋められていたが、1997年まで3年かけて復元された。

大会組織委員会などによると、東外堀でのスイムが可能なのは、他の堀の水が流入しない独立した水系である点が大きい。水位維持に利用されるのは中浜下水処理場(大阪市城東区)からくる高度処理水。さらにトライアスロン実施に向けた水質改善プロジェクトとして、第2回、第3回の大会前の約3カ月間、マイクロバブル発生装置を設置する実証実験も行ってきた。

実験の運営を行うNPO法人「エコデザインネットワーク」(大阪市住之江区)によると、微細な気泡が溶け込んだ水を毎時20トン、堀の中に戻して循環させ、好気性バクテリアの活性化により有機物を分解。いわば「自然治癒能力を向上させる」(福本義人事務局長)という試みだ。

堀では藻などが生育。底に堆積する樹木の落葉などが有機汚泥になる。これらの分解・除去を促進する実証実験で、水の汚れを示すCOD(化学的酸素要求量)などの数値は抑制。高度処理水の注水による相乗効果も推認できた。

この先注目すべきは、21年度に稼働予定の中浜下水処理場の新施設だ。大阪市建設局によると、膜分離活性汚泥法(MBR)という技術で、1000分の1ミリ未満の穴を持つろ過膜で汚れや細菌を除去。透明度が高く、大腸菌ゼロの超高度処理水が、稼働後に東外堀にも供給される。

実は市中心部の東横堀川・道頓堀川でも新施設の稼働は大きな意味を持つ。大阪市は「川底が見えるくらいのきれいな川」を目指しており、下水の流入を防ぐ貯留施設、水門調整、しゅんせつと並んで、同処理場の超高度処理水による浄化に期待をかけている。

大阪城の東外堀も水質改善への夢は膨らみそう。アジアカップ大会だった大阪城トライアスロンは、来年はワールドカップ大会に格上げされ、5月23日、24日に開催。「お堀で泳ぐトライアスロン」がより広く世界に発信されるだけに、関係者の"本気"を見てみたい。

(影井幹夫)

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