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「5カ所打撃」難敵を攻略 高校野球監督・岡田龍生(上)

高校球界の名将、智弁和歌山前監督の高嶋仁の言葉を大阪・履正社監督の岡田龍生(58)は頭にとどめてきた。「1番と2番はえらい違いやぞ」。甲子園での最高成績が2度の選抜準優勝だった履正社は今夏、ついに初優勝を果たした。そこからは準優勝時をしのぐ祝福の嵐。「確かに全然違う」と岡田は実感した。

初優勝を果たし、胴上げされる履正社の岡田監督

出発点は今春の選抜大会だった。1回戦で石川・星稜の150キロ超の剛腕、奥川恭伸に3安打、17三振の無得点負け。ぐうの音も出ない完敗に、奥川の打倒なくして夏の優勝なし、と岡田の腹は決まった。

それぞれ120キロ、140キロの直球、カーブ、スライダーを繰り出す4台のマシンと、選手が投じる計5つのケージで打つ「5カ所バッティング」で鍛えて進んだ夏の決勝は星稜との再戦に。11安打5得点で奥川を攻略し、頂点に立った。打棒とともに光ったのが、低めに外れる変化球の見極め。打たずに相手を窮地に追い込む強者特有の試合運びに、岡田はそれまでの指導が報われる思いがした。

同じ大阪の高校で全国屈指の強豪、大阪桐蔭とのライバル関係が注目されてきた。寮生活で野球に打ち込める大阪桐蔭に対し、履正社は寮がなく、若干数の下宿生を除いて選手は自宅からの通い。校舎がある大阪府豊中市からやや離れた茨木市に専用グラウンドがあるものの、送迎スクールバスの運行の制約から練習は3時間ほどに限られる。

1.5秒に1球の「マシンガンノック」

決して長いとはいえない練習時間をいかに効率よく使うかという観点から生まれたのが、5カ所バッティングだった。2人1組で1カ所につき6分、計30分で全てのケージを回る。その間、他の選手は近くのテニスコートで守備動作の確認をしたり、投げ込みをしたり。守備練習で岡田が約1.5秒に1球の速さで打つ「マシンガンノック」も効率重視の思考の産物だ。

「1球でも多くボールに触れさせる」ことを第一に鍛えたチームは夏の甲子園を前にした7月に「完成品」に仕上がる。そこからは不慣れな作戦は使わない。対戦相手をかく乱するための奇襲に自チームの選手も戸惑うようではだめで、試みたところで「成功率は半分以下」だという。

今夏の甲子園大会は全6試合で2桁安打、チーム打率3割5分3厘をマークした一方、盗塁はゼロ。慣れない機動力は使わず打力を前面に出す今年のスタイルを貫き、それで敗れたら仕方がない、という割り切りが選手の心をほぐした。「だから球も飛んだんと違いますか」。のびのびとした各打者のスイングは岡田のおおらかさを映しているようだった。=敬称略

(合六謙二)

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