エジプトで異例の2週連続デモ シシ政権統治に揺らぎも

2019/9/29 21:43
保存
共有
印刷
その他

【カイロ=飛田雅則】エジプトで27日、強権支配を続ける軍出身のシシ大統領の退陣を求めるデモが発生した。デモが事実上禁じられ、弾圧される恐れがある中、国民が2週連続で抗議行動に出るのは異例だ。言論弾圧や経済運営に不満が高まり、シシ政権の統治に揺らぎが生じている可能性がある。政権側は武力を背景に取り締まり強化に動くが、かえって国民の暴発を引き起こすリスクが高まっている。

エジプトの首都カイロでは治安部隊が配備され、デモを抑えるため厳戒態勢がとられた(27日)=ロイター

21日にもエジプトの首都カイロでシシ大統領の退陣を求めるデモが発生した=ロイター

カイロ近郊のワラクで27日のイスラム教の金曜礼拝後、「シシ(大統領)は退陣しろ」とデモ隊が練り歩いた。ロイター通信によると約1千人が参加し、生活改善を求め、政権汚職を批判。治安部隊は催涙弾で退散させた。南部ケナでも住民が反政府デモで訴えた。

1週間前の20~21日には首都カイロ中心部やアレクサンドリア、北東部のスエズでデモ参加者がシシ氏の退陣を求めた。スエズでは治安部隊がデモ隊に実弾を発砲したとの報道もある。

デモの発端は、スペイン在住のエジプト人実業家が「現政権は公金で、豪華な大統領宮殿を建設している」などと政権や軍の腐敗をネットで暴露し、シシ氏の退陣を求めるデモを呼びかけたことで、たちまち拡散した。実業家は建設業を営み、建設代金を巡って軍とトラブルになり国外に逃亡したとされる。

治安悪化を恐れた投資家による株式売却の動きが殺到し同国証券取引所は22日、取引の一時停止に追い込まれた。その後、再開されたが同日の株価指数は前営業日に比べ5%安で取引を終えた。29日時点の株価もデモ以前の水準を回復していない。通貨はデモ前とほぼ同水準の1ドル=16.30エジプトポンド台を中心とする値動きで「当局が介入して通貨安を抑えているのではないか」(金融関係者)との観測も浮上する。

今回のデモが政権転覆に直結するとの見方は少ない。しかし、国民が拘束される危険を冒してまで政権に抗議する行動に出始めたことは、シシ政権による反対派を強権的な手段で押さえ込むという統治が限界に近づきつつある可能性がある。

エジプトでは2011年の民主化運動「アラブの春」でムバラク独裁政権の崩壊後、同国初の自由選挙で誕生したモルシ大統領を、シシ氏が13年に事実上の軍事クーデターで追放し実権を握った。14年の選挙を経て大統領に就任し、これまで政権に批判的だった活動家やジャーナリストを拘束するなど批判する声を封じ込めてきた。国民は公の場で政府を批判することはできないなど社会には閉塞感が漂う。

経済面では財政再建のために国際通貨基金(IMF)のプログラムを受け入れ、国民に増税や公共料金の引き上げなど負担を強いている。経済成長率は15年以降、4%超が続くが、恩恵を受けるのは幅広く経済活動をする軍系列企業に限られているとして、国民の不満は募っている。

20日のカイロに続き、27日にカイロ近郊で反政府デモを防げなかったことで、強力なリーダーシップのもとで維持してきた安定が見た目ほど強固ではない可能性がある。人口約1億人でアラブ圏最大の人口を抱えるエジプトが揺らげば、周辺のアラブ諸国にも混乱が波及するリスクがある。混乱に乗じて過激派が台頭する恐れもはらむ。

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]