帰ってきたスパイダーマン ソニーとディズニー仲直り

2019/9/28 4:55 (2019/9/28 14:51更新)
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ソニーとマーベルが共同で手掛ける「スパイダーマン」の次回作は2021年7月の公開を予定する=ロイター

ソニーとマーベルが共同で手掛ける「スパイダーマン」の次回作は2021年7月の公開を予定する=ロイター

映画「スパイダーマン」が帰ってきた。収益配分などを巡って交渉が一時決裂していたソニーと米ウォルト・ディズニーが提携を続けることで合意し、2021年に公開する次回作の制作をディズニー傘下マーベル・スタジオのケビン・ファイギ社長が担うことが決まった。ソニーとディズニーの対立についてはファンや俳優などから批判が噴出。マーベル制作の続編を求めるファンの声が両社の合意を導いた。

ソニー・ピクチャーズエンタテインメント(SPE)は27日、マーベル・スタジオと組んで制作した17年公開の「スパイダーマン ホームカミング」と19年公開の「同 ファー・フロム・ホーム」に続く次回作も共同で手掛けると発表した。21年7月の公開を予定する。ファイギ氏のほか、過去2作品を手掛けたプロデューサーのエイミー・パスカル氏も継続して携わる。スパイダーマンはマーベル・スタジオが手掛ける他の映画作品にも引き続き登場する。

「スタジオと映画、ファンにとって勝利のパートナーシップだ」。両社の合意を受けてパスカル氏は声明でこう指摘した。米映画メディアのバラエティーによると、新たな合意でディズニーは次回作の利益の25%を受け取る見込みという。当初は50%を要求していた。

ソニーとディズニーは一転して提携を続けることにした理由を明らかにしていないが、スパイダーマンの映画をめぐっては8月、ソニーとディズニーが次回作の投資・収益配分で折り合えず、マーベル・スタジオが制作から離脱すると米メディアが報じていた。この報道を会社側が追認すると、各方面から不満の声が広がった。

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マーベル作品のヒーローの一人としてスパイダーマンを好きになったファンも多く、米ロサンゼルス在住の30代男性は「お金のためにスパイダーマンをマーベル映画の世界から引き離すなんてひどい」と話していた。主役を演じる俳優のトム・ホランド氏もディズニー主催のイベントで「クレージー(狂っている)」と発言し、ネット上にもソニーやディズニーに対する恨み節があふれた。

スパイダーマンはソニーの映画事業にとって最大のヒットシリーズだ。02年に映画公開を始め、多くの作品を世に送り出した。米映画情報サイトのボックス・オフィス・モジョによると、ソニーの興行収入上位10作のうち6作をスパイダーマンが占める。

「ファー・フロム・ホーム」は世界の興行収入が11億ドル(約1180億円)を上回る。映画アナリストのジェフ・ボック氏は「今の映画業界では、ヒーロー映画が興行収入の上位を独占する最も魅力的なジャンルだ。これが一連の騒動の背景にあった」と話す。

ソニーは昨年4月の吉田憲一郎社長の就任以降、ゲームや音楽、映画というエンタメ重視の姿勢を鮮明に打ち出している。スパイダーマンは映画事業だけでなく、ゲームで活用するなど複数事業にまたがって収益貢献ができる有力コンテンツ。多様なエンタメ事業を持つソニーにとって、今後のコンテンツ戦略の成否を占う試金石にもなる。 一方のディズニーは米国のテーマパークにスパイダーマンのアトラクションを設ける計画で、来客増につなげようとしている。

スパイダーマンはキャラクターの版権をディズニー傘下のマーベルが持つ一方、映画化権をソニーが持つ。この複雑な権利関係は残るもよう。今回の騒動ではファンが置き去りにされ、批判が相次いだ。ここまで築き上げたスパイダーマンブランドを傷つけない距離感をソニーとディズニーがどう築き続けるかが、今後も大きな課題となりそうだ。(シリコンバレー=佐藤浩実、岩戸寿)

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