欧州の観光業を直撃 英トーマス・クック破産
ホテルにキャンセル殺到 雇用問題も

2019/9/26 18:14
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【ロンドン=佐竹実】英老舗旅行会社トーマス・クック・グループの破産が欧州の観光産業に影を落としている。ツアーだけでなく傘下の航空会社も営業を停止し、イタリアではホテルのキャンセルが大量に発生している。欧州各地に同社が抱える雇用の維持も課題だ。英政府は立法措置により利用者を保護する考えだが、影響は英国内にとどまらない。

トーマス・クックのチェックインカウンターに列を作る旅行客(24日、ギリシャのクレタ島)=ロイター

トーマス・クックは23日に破産し、ただちに営業を停止した。観光大国のイタリアでは同社と連携する宿泊施設が多い。ナポリの南にあるリゾート地のソレント半島ではホテルの予約キャンセルなどが大量に発生した。伊ホテル協会のカンパーニャ州部会によると、ソレント半島だけで400万ユーロ(約4億7000万円)程度の損害を予測している。

ソレント半島は夏休みシーズンなどには外国人観光客の約4割を英国人客が占める。今回の破綻を受け、同部会は緊急対策チームを立ち上げた。加盟企業の被害状況を詳しく調べ、訴訟を起こす準備もしている。同部会のイアッカリーノ会長は「トーマス・クックとは良い信頼関係を築いてきたが」と落胆する。

黒海沿岸にリゾートがあるブルガリアも同様だ。ロイター通信によると、トーマス・クックは年間45万人近い観光客をブルガリアに送り込んでおり、破産による被害額は5600万ドル(約60億円)にのぼる。アンゲルコバ観光相は「ホテルの収入が減る可能性がある。来年の夏休みシーズンにも影響する」と話した。

トーマス・クックは旅行会社だけでなく航空会社やホテルなども傘下に持つ。世界で抱える雇用は2万人を超える。同社の子会社で独航空のコンドル航空は24日、独政府や本社を構えるヘッセン州の政府との間で3億8千万ユーロのつなぎ融資で合意し、破綻を免れた。約5千人の従業員と数十万人の顧客を守る必要があると判断した。

英国では国外に足止めされた15万人のために、政府はチャーター機を世界各地に派遣して旅行客を帰国させ、費用負担は1億ポンド(約133億円)にのぼった。

ジョンソン首相による議会閉鎖が違法と判断されて再開した25日の議会下院では、欧州連合(EU)離脱よりも先に議論されたのがトーマス・クックの破産の影響だった。シャップス運輸相は「旅行者を2度とこのようなばかげた状況に置いてはならない」と表明し、立法措置により利用者を保護する必要があるとの見方を示した。だが影響は英国外にも広く及び始めている。

英政府は突然の破産を防げなかった経営陣などについて調査を始めた。英地元紙によると、ファンコーサー最高経営責任者(CEO)の過去5年間の収入が800万ポンドを超えたことについても批判が出ている。

団体旅行の元祖であるトーマス・クックはトラベラーズチェック(旅行者用小切手)を生み出したことでも知られる。鉄道の時刻表も旅行者の間では有名だ。現代の旅行会社の手本となったが、インターネットの急速な普及や民泊などシェア経済の広がりに対応できなかった。中国の大手投資会社の復星集団を筆頭株主にも迎えたが、再建できなかった。

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