富士通、背水のコンサルシフト 歴代トップは目標未達

2019/9/26 20:04
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経営説明会にのぞむ富士通の時田隆仁社長(26日、都内の本社)

経営説明会にのぞむ富士通の時田隆仁社長(26日、都内の本社)

富士通は26日、6月の時田隆仁社長の就任後初めて経営方針説明会を開いた。時田社長が掲げるのは、顧客企業に人工知能(AI)やクラウドシステムなどのデジタル投資を勧める「コンサルティング」を軸にしたテクノロジー事業の底上げだ。同事業の売上高を3兆5000億円に引き上げる。ただこの20年近く、歴代トップが掲げた経営目標は相次ぎ未達に終わっている。

富士通の主力はシステム構築や運用などのテクノロジーソリューション事業だ。2019年3月期には売上高3兆1237億円とグループ全体の8割を稼いだ。今回の計画では23年3月期に1割増の3兆5000億円に引き上げる。売上高営業利益率も前期の4.4%から10%を狙うという。

このため人材教育や企業買収なども含め5年間で5000億円を先行投資に回す。時田社長は説明会で「利益率10%は決して容易な道ではないが、施策を着実に進めれば達成できる」と力を込めた。

システム開発の中でも富士通が得意としてきたのは、顧客の要望にもとづいてゼロから作り上げる受託開発だった。それぞれ独自に開発するため作業効率が上がりにくい。開発費も作業にかかわる人数と期間を掛け合わせた原価をもとに相場が決まっており、採算を高めにくかった。

コンサルティングでは、富士通側からも企業などにデジタル投資を提案して事業チャンスを広げる。例えば効率的な物流ルートづくりや独自の渋滞予測にもとづく車両管理などだ。自社のAI基盤「ジンライ」や、すべての物がインターネットに接続する「IoT」機器などの採用につなげる。クラウドソフトの定額利用などを組み合わせ厚い利幅を確保しやすい。顧客の要望に従いシステム開発する「ものづくり」頼みを抜け出す。

時田社長が描く構想は国内のライバルが先行して実績を上げている。野村総合研究所のコンサルティング事業の営業利益率は18.6%と、同社のシステム開発事業より約8ポイント高い。公共団体や金融、メーカーなど幅広い顧客を持つ富士通にとっても成長の可能性がある分野とはいえる。

とはいえ、道は平らではない。国内IT各社や米IBMなどの長年のライバル、会計監査法人系やインドなどの新興ITとも競合する。

対する富士通はこれまで提案営業ができる人材が手薄だった。19年度中にはこうした事業を担う新会社をコンサルタント500人体制で立ち上げ、22年までに2千人まで増やす。外部の人材を大胆に取り入れ、トップ級の人材を役員並みの3000万~4000万円の報酬で招く制度も導入する。「富士通にこだわらず、顧客のために他社の製品やサービスを提案する自立した会社にする」(時田社長)

説明会で時田社長は、製品やサービスを別々に提供する富士通全体の組織体制にもメスを入れる方針を示した。「製品とサービスを一体で提供できるようにする。営業やシステムエンジニアなどの職種は全て呼称から見直す」という。

これまで富士通では00年以降に就任した社長が掲げた経営目標は、多くが達成できなかった。前任の田中達也会長も15年から事業再編に2000億円強を投じてきたが、営業利益率10%などの目標を撤回せざるを得なかった。

停滞ぶりは業績に如実に表れている。アクセンチュアの営業利益率は14%と、富士通の全社ベースと10ポイント以上の差が開く。IBMとはそれ以上の差だ。時価総額でも大きく差を付けられている。

「もう随分、富士通の動向は追っていない」(国内運用会社のあるファンドマネジャー)。富士通はこの約20年、投資家の期待に応えきれなかった。評価の厳しさは時田社長も認めている。新社長の方針説明会はこれまで10月以降に開くのが慣例だったが、今回は前倒しした。背水の陣を敷く思いで目標をやりきることが求められる。

(島津忠承、丸山大介)

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