空飛ぶクルマ、年内に有人実験 スカイドライブ

2019/9/30 2:00
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国内外のスタートアップ企業などが、空間を垂直に離着陸して移動する「空飛ぶクルマ」の実用化を急いでいる。日本のスカイドライブ(東京・新宿)は年内に有人の飛行試験を実施する計画で、試作機の製作などのため15億円調達した。空飛ぶクルマは移動革命の中心分野のひとつで、米欧や中国で開発が活発。制度づくりや事業モデルの確立も含め、地域間の競争が激しくなりそうだ。

スカイドライブが年内に計画している実験は、成功すれば国内で初の有人飛行になる見通し。愛知県豊田市に敷地面積1万7千平方メートル規模の開発・試験拠点を開設しており、敷地内の屋内試験場で試作機を飛ばす。

同社は自動車メーカーの社員らが設けた有志団体を母体とし、18年に発足した。機体を安定させる技術などに課題があったが、福沢知浩代表取締役はモーターの出力向上などで「70キログラムの人形を載せて3メートル浮上し、4分以上安定して飛べるようになった」と話す。

試作機の製作にあたり、グリー系ファンドのストライブ(東京・港)やヤフー子会社のZコーポレーション(同・千代田)などから資金を調達。自治体の助成金を含め計15億円確保した。23年をめどに機体を発売したい考え。当初は操縦者を必要とし、乗客1人を30キロメートルほど飛ばす。

ウーバーの刺激

空飛ぶクルマに注目が集まった背景には、陸上のライドシェアで急成長した米ウーバーテクノロジーズの存在がある。23年に米国とオーストラリアで3~4人乗りを飛ばすと宣言しており、最高時速240キロを目指す。

機体の開発中であり、事業の収支を見通すにはまだ早い。ただ、ウーバーはタクシーサービスのイメージを示してはいる。ブラジル・サンパウロ州で、陸上のタクシーなら約2時間かかる移動が空飛ぶタクシーで20分近くになり、料金は陸上のタクシーの3倍。富裕層らの需要が鍵になる。

米国ではスタートアップのキティホークが世界で700回を超す実験を実施している。テクノロジーで米国に対抗する中国ではイーハンが、機体の実験映像を公開した。欧州では、5人乗りのリリウムと2人乗りのボロコプターというドイツ勢が目立つ。

欧州エアバスなど航空機大手も参画しているが、先陣切ってリスクをとろうとするスタートアップが主役となっている。ただ、どの企業も確実に先頭にいるとは言えず、団子状態にある。

米モルガン・スタンレーは空飛ぶクルマの世界市場が40年までに1兆5千億ドル(約170兆円)に達するとみる。人やモノの移動サービス、機体、インフラなどが含まれる。実用化に先んじる意味は大きく、一歩抜けだす競争が激しくなる。

安全ルールの整備課題

日本でも開発が進む空飛ぶクルマ。交通手段として実用化するには、安全確保のためのルールづくりなど課題が多い。

空飛ぶクルマはドローンや航空機と同じく航空法で規制される。人が乗る空飛ぶクルマは、人が乗らないドローンとは違うもので、航空機と似た扱いになる見通し。航空機は安全性を調べる耐空証明があって初めて飛べる。空飛ぶクルマにどの程度の性能を求めるか、ルール整備が必要だ。

空飛ぶクルマが自動で飛ぶためには、決められたルートから外れないことが欠かせない。ただ、数が増えると、他の機体と衝突しかねない。空の混雑を考え、ぶつからない運航管理体制が不可欠だ。ヘリコプターや航空機などと統合された管理の仕組みが必要になる。

電池性能の向上や騒音への対応などハードルは尽きない。スカイドライブは経済産業省や国土交通省などと協力し、制度の整備を後押しする。

 ▼空飛ぶクルマ 世界のスタートアップ企業や航空機大手が2020年代の実用化を目指す。多くの機体はヘリコプターよりも小さくて軽く、開発のしやすさから電気で動かす仕組みを採用している。プロペラを回して垂直に離着陸し、滑走路は要らない。
 多くの企業は世界の人口が大都市に密集していく中で渋滞解消のニーズがあるとみている。日本では離島など交通の不便な場所での利用も期待されている。医療や災害救助でも役立つ交通サービスに育つ可能性がある。

(編集委員 奥平和行、山田遼太郎)

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