現代音楽の自由な感覚に挑む若手バイオリニスト

文化往来
2019/10/1 6:00
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1988年生まれのバイオリニスト、伊藤亜美はスイス・ローザンヌに留学し、2011年に英国北王立音楽院(RNCM)マンチェスター国際バイオリンコンクールで優勝するなど将来を期待される音楽家だ。フランス音楽を得意とするが、若手奏者には珍しく、日本の現代音楽の名手としても評価が高い。19年10月6日にトッパンホール(東京・文京)で開くリサイタルでは、池辺晋一郎など日本人作曲家が作・編曲した曲を4曲弾く。「私は日本人なので、今を生きる日本人の曲を演奏したい。現代作品は自分の武器になる」と語る。

フランス音楽とともに日本の現代作品を得意とするバイオリニストの伊藤(尾池)亜美

フランス音楽とともに日本の現代作品を得意とするバイオリニストの伊藤(尾池)亜美

演奏曲のうち、72年生まれの作曲家、川島素晴の「孤島のヴァイオリン」、ベテラン池辺晋一郎が学生時代にバルトークを意識して作った「無伴奏ヴァイオリンソナタ」は演奏機会が少ない作品。「演奏に前例がないと、むしろ自分の解釈ができてやりやすい」。10月29日には作曲家・ピアニストの高橋悠治の作品を特集する公演にも出演。さらに若手作曲家の坂東祐大らと「アンサンブル・フォーヴ」という室内楽グループを結成し、坂東らの曲を収めたCDを11月に発表する。「現代曲の挑戦で、絶対音感的な正確さで形成された音をあえて壊し、決まり切った音程やリズムからの解放を意識する。そこに音楽家として成長する余地がある」

もともと「尾池亜美」という本名で活動していたが、16年の結婚による改姓を機に活動名を「伊藤亜美」に変更。その後出産を経て音楽活動に復帰したが、10月6日の公演の後に「尾池」に戻す。「家族を持ち、一人で音楽に向き合う時間のありがたさを実感した。音楽家の私と家庭の私を区別する」。元来持っていた優美な演奏スタイルに人生経験に基づくたくましさや自由な感覚を加え、「優等生」的音楽家からの脱却を目指す。

(岩崎貴行)

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