今日も走ろう(鏑木毅)

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緊迫のMGC、収穫あり 激しい心理戦に醍醐味

2019/9/26 3:00
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東京五輪代表選考レース「マラソングランドチャンピオンシップ」(MGC)が終わった。男女ともまれにみる緊迫したレースとなり、特に男子3位の大迫傑選手らによる40キロメートルすぎの攻防は見る側にとっても手に汗握る名勝負となった。

近年のマラソンはペースメーカーが先導し、レース終盤になるまで駆け引きがほとんど見られない。だが今回はスタート直後から選手同士の激しい心理戦が展開され、片時も目を離すことができなかった。久々にマラソンの面白さを味わえたように思う。

多くの選手が帽子をかぶってスタートしたMGCの男子

多くの選手が帽子をかぶってスタートしたMGCの男子

とりわけ設楽悠太選手のスタートからの逃げは立派なものだった。気温が上昇する中であえて選んだこの先行策は、14位に終わった結果からすれば無謀とも映る。ただ、翌日の東京は比較的冷涼であり、開催日が1日ずれていたら、あるいはスタート直後ではなく10キロメートルくらいからの逃げであれば成功を収めたかもしれない。たらればの話にはなるけれど、考えれば考えるほど高温でのマラソンの難しさを痛感する。

それにしても優勝した中村匠吾選手の最後のスパートは圧巻だった。2015年に彼が箱根駅伝1区で走ったシーン、一度は区間賞争いから脱落したものの見事に復活しトップでタスキを渡した時を見ているようだった。今回も全エネルギーを絞り出すような走りは健在。疲れ切ってもさらに粘れる身体能力と心の強さは必ずや五輪でも生きるはずだ。

エリートだけに限定された特別なレースとはいえ、沿道には多くの観客が訪れ、来年のオリンピックマラソンへの熱の高さを感じた。さらにMGCがスタートした2年前から男子では2回の日本記録が更新され、この間に開催された多くの選考会で選手層が一気に厚くなった。これらを鑑みると、代表選考の流れを大胆に変える枠組みを作った日本陸連のマラソン強化戦略プロジェクトリーダーの瀬古利彦さんら、関係者の尽力に心から敬意を払いたい。

あえて苦言を呈するなら、MGCは2~3週前に開催すべきだったのかもしれない。当日は確かに気温は30度近くまで上昇したとはいえ、8月上旬に開催される本番では、レース時間が少しずれるものの暑さのレベルはこの程度では済まないだろう。今回より厳しい気象条件で実施すれば、より精度の高い選考レースになっただろうし、暑さで得られた教訓はよりリアリティーのあるものとして来年に生かされていたのではなかろうか。

実際、男子より20分遅い午前9時10分にスタートした女子は、強い日差しに照らされる時間がより長くなったせいだろうか、終盤に大きくペースを崩した選手が多かった。こうした実態をみるにつけ、暑さへの対策が最大のカギとなることはより明らかになった。

五輪本番は間違いなくスローペースとなり、序盤からこのペースにじれた選手の揺さぶりが何度も続くだろう。選手はその都度どのように動くかを考え続ける必要があり、「心が疲れるレース」となる。高速化した世界の趨勢とは全く異次元の酷暑のレースは、入念な対策を練った分だけ思わぬ大きな成果が得られるのではと期待している。

(プロトレイルランナー)

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