スペイン、財政・移民 溝深く 11月に再び総選挙へ

2019/9/24 22:25
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サンチェス首相は単独過半数獲得の道筋を描けていない(18日、マドリード)=ロイター

サンチェス首相は単独過半数獲得の道筋を描けていない(18日、マドリード)=ロイター

【パリ=白石透冴】スペインは11月10日、過去4年で4回目となる総選挙を実施する。サンチェス首相が4月の総選挙後の連立交渉に失敗したのが直接のきっかけだが、11月の選挙でも過半数を確保する政党は出ない見通しで、政治の混迷が長期化しそうだ。財政政策や移民の受け入れ問題を巡る民意の分断が深まり、政治を分極化させていることが、安定政権づくりが難しくなっている背景にある。

サンチェス氏が率いる与党の社会労働党(中道左派)は4月の総選挙で下院350議席中、123議席を得て第1党となった。だが首相指名を受けるために必要な過半数の支持が期限の9月23日までに集まらず、上下院の解散が決まった。

大手紙パイスが報じた18~20日実施の世論調査によると、11月の総選挙で社会労働党は132まで議席を伸ばし第1党の座を守るが、過半数には届かない見通し。各党の支持率に大きな変化はなく、再び連立交渉でもめる恐れが大きい。

スペインは1978年の民主化後、中道左派の社会労働党と中道右派の国民党による二大政党制が続いてきたが、近年は両政党の退潮が著しく、不安定な政治に陥っている。顕著だったのが2015年12月の総選挙だ。前与党の中道右派国民党が過半数割れを起こし、16年のやり直し選挙につながった。その後政権を奪ったサンチェス氏も19年度予算案で他党の支持を得られず、4月の総選挙に追い込まれた。

政治の不安定化の背景には割れる民意がある。10年ごろ始まった欧州債務危機で失業率が20%を超え、既存政党では格差を解決できないとの世論が強まった。15年選挙では「反緊縮」の旗を掲げて極端な社会保障の充実を訴えた急進左派ポデモスと、クリーンな政治を強調した中道右派シウダダノスの新興2政党が台頭し、従来の二大政党制が揺らいだ。

欧州の難民・移民問題もスペイン政治の不安定要因だ。18年にイタリアで誕生したポピュリズム(大衆迎合主義)政権が移民の受け入れ拒否に動くと、隣国のスペインに移民の流入が集中。4月の総選挙では反移民を主張する極右ボックスが初めて下院に24議席を確保した。フランコ独裁体制への苦い記憶から極右勢力が弱かった同国にとって大きな転換点となった。

伝統の二大政党である社会労働党、国民党にこの新興3党を加えた計5党に票が分かれるのが現在のスペインだ。独立問題がくすぶる北東部カタルーニャ州への対応も各党ごとに異なり、民意の分断に拍車をかける。

サンチェス氏は11月の総選挙で第1党の座を守れば、幅広く連携を探る見通しだ。だが移民に寛容でカタルーニャとの対話を重視するサンチェス氏に対し、右派政党は移民保護の制限、カタルーニャへの厳しい対応を唱え、意見の溝は大きい。

一方、サンチェス氏とポデモスは移民政策では立場が近いが、本格的な政権入りを求めたポデモスと、閣外協力にとどめたかったサンチェス氏の溝が埋まらず、連立交渉が決裂。ポデモスのイグレシアス党首は「サンチェス氏は無礼で議会制民主主義を軽視している」と非難する。

スペインの経済成長率は18年の2.6%から、19年の2.3%、20年の1.9%に鈍化する見通し。失業率も約14%で欧州連合(EU)ではギリシャに次いで悪い。相次ぐ選挙で景気対策の法案審議などに遅れが出るのは必至で、悪影響も懸念される。

同様の民意の分断は他の欧州諸国にもみられる。ドイツではメルケル首相が不安定な連立政権の運営を迫られているほか、極右政党の「ドイツのための選択肢(AfD)」が躍進する。フランスでも極右政党の国民連合が、マクロン大統領の与党を抑えて5月の欧州議会選で第1党を獲得した。欧州各国の政治の不安定化は欧州統合の行方にも影を落としている。

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