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気候行動サミット、次世代への課題解消見えず

国連「グレタ旋風」も

【ニューヨーク=大島有美子】米ニューヨークの国連本部で23日開いた「気候行動サミット」は加盟国の温度差が目立った。2050年に温暖化ガスの排出をゼロにする目標を掲げたが、実現は見通せない。自分たちの命運を左右する気候変動への取り組みが不十分だと若年層は不満を募らせている。

「よくそんなことが言えますね」。開幕式で怒りに声を震わせたのは、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさん(16)だった。各国が「緊急性は理解している」と言いながら気候変動対策に背を向けた結果、次世代にツケを回していると首脳らを糾弾した。

英語での発言原文はNikkei Asian Reviewに掲載しています「'How dare you': Transcript of Greta Thunberg's UN climate speech

グレタさんは気候変動対策を訴える「学校ストライキ」を1人で始めた若者たちの運動の中心人物だ。サミットに先立つ20日、世界150カ国以上で約400万人の若者がデモ行進をした。サミットに出席した小泉進次郎環境相も「重く受け止めた」と述べた。

国連で首脳級が集まる大規模な気候変動の会合は14年以来だ。「我々は気候危機に負け続けていたが、世界は目覚め始めている」。サミットを主導した国連のグテレス事務総長は、77カ国が50年までに温暖化ガス排出量を実質ゼロにすると約束したと強調した。

だが目標達成は容易ではない。ドイツは50年に実質排出ゼロを目指すが、総電力の約4割を石炭火力発電が占め、日本より依存度が高い。石炭火力をゼロにするには産業構造の変革が求められ「雇用転換など労使間で粘り強い交渉が必要」(独発電メーカー幹部)という。

それでも欧州勢は取り組みで先行している。メルケル独首相は気候変動対策に14年比2倍の40億ユーロ(約4700億円)を投じると表明。マクロン仏大統領は緑の気候基金への出資額を引き上げると約束した。

一方で、日米中などはサミットで「50年の排出ゼロ」を表明した77カ国に含まれなかったようだ。

温暖化ガスの最大の排出国である中国は再生可能エネルギーの大量導入などに取り組むが、先進国側がまず温暖化ガスを削減すべきだとの立場だ。日本も「今世紀後半のできるだけ早い時期に実質ゼロにする」との目標にとどまる。トランプ米大統領はサミットに急きょ出席したが、発言せずに約15分で立ち去った。

12月にチリで開く第25回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)では、温暖化ガス削減目標を点検するしくみを話し合う。ただ具体的な削減の道筋は見えない。

原子力発電所の再稼働問題を抱える日本は、温暖化ガスの排出が多い石炭火力発電所を新増設する方針を変えていない。

国連の世界気象機関は15~19年の5年間の世界の平均気温が観測史上最も高くなるとする報告書を出した。二酸化炭素(CO2)の排出量が過去最大になったことが要因で、11~15年の5年間を0.2度上回るという。

米国が離脱表明した温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」では、産業革命前からの気温上昇を可能な限り1.5度以内に抑える目標を掲げる。しかし気温はすでに約1度上昇するなど対策は後手に回っており、グレタさんは「私たちは絶滅の淵にある」と訴えている。

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