時代と共振する井上ひさし「組曲虐殺」、7年ぶり上演

文化往来
2019/9/26 6:00
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井上ひさし最後の戯曲「組曲虐殺」が7年ぶりに上演される。戦前に小説「蟹工船(かにこうせん)」で過酷な労働を告発した小林多喜二を描く音楽評伝劇で、2009年の初演以来3度目。29歳の若さで拷問による死を迎えたのは、なぜか。演出を練りあげてきた栗山民也は「信念を曲げず死を選んだ多喜二の意志が、今の時代に明らかになってきた」と再演の意図を明かす。

2012年に再演された「組曲虐殺」で小林多喜二を演じる井上芳雄(こまつ座提供)

2012年に再演された「組曲虐殺」で小林多喜二を演じる井上芳雄(こまつ座提供)

作品は多喜二が特高警察に連行され、拷問で命を落とす1933年2月までの2年9カ月をたどる。肺がん闘病のさなか、苦吟して執筆した井上ひさしは初演の翌年に亡くなった。栗山によると、農地解放運動にかかわったあと病死した井上の父の姿が多喜二に重ねられているという。「多喜二のように非合法政党の機関紙を配っていたのだと告白されました。井上さんの戯曲には、必ず実体験が織り込まれる。初演の稽古で、いつもは笑い転げる井上さんが、おえつしていた」とふりかえる。

初演以来、国境を越えて活躍するジャズピアニストの小曽根真が伴奏者となり、ミュージカルのプリンスこと井上芳雄が多喜二を演じる。「権力者が平気でうそをつく。そんな今の時代にこの舞台をぶつけたい」という栗山の思いが稽古場で共有されていた。今回、演出面では作品の「不条理性」に着目、怒りと笑いが混在し、怒らないといけないときに笑いが起きる井上喜劇の活力を生かしたいという。

2012年に再演された「組曲虐殺」の井上芳雄(左)と高畑淳子(こまつ座提供)

2012年に再演された「組曲虐殺」の井上芳雄(左)と高畑淳子(こまつ座提供)

初演から変わらないキャストは井上以下、神野三鈴、山本龍二、高畑淳子、これに上白石萌音らが加わる。ホリプロと組んで上演するこまつ座の社長で、作家の三女である井上麻矢は「皆が涙を流し、稽古が始まった」と語り、特別の思いを上演にこめる。10月6~27日に東京の天王洲銀河劇場で上演され、福岡、大阪、松本、富山、名古屋に巡演する。

(内田洋一)

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