米、不法移民の足止めに躍起 メキシコや中米と協定

トランプ政権
中南米
2019/9/21 3:34
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米からメキシコに移された不法移民(北部シウダフアレス)

米からメキシコに移された不法移民(北部シウダフアレス)

米トランプ政権が中米などからの移民を入国前に足止めしようと躍起になっている。関税発動などをちらつかせ、メキシコや中米グアテマラと米への難民申請を希望する移民を待機させる協定を結び、他の中米諸国とも協議を始める方針だ。一方で国連機関などが提案する雇用創出などの移民抑制策には無関心で、不法移民問題の抜本解決は見えないままだ。

「米にはチャンスがある。今は待つだけだ」。米テキサス州に接するメキシコ北部のシウダフアレス。政府の保護施設でグアテマラ出身のミゲルアンヘル・オルティスさん(45)は妻(33)、息子(13)、娘(4カ月)と昼食を囲みながらこう話した。家族で米国境の川を渡ったが3日でメキシコに戻された。難民申請の面談は来年1月。入国許可の保証は、ない。

2020年の大統領選をにらみ、中米などからの不法移民の波を止めたいトランプ氏。目を付けたのが難民申請制度だ。米では手続き中は滞在が許可されるため、多くの不法移民は手続き中に行方をくらます。この制度を利用させないために、手続き中でも米国外で待機させたり、申請や手続き自体を米国外でさせたりすれば、不法移民の流入が抑えられると考えた。

最初の"防波堤"に選んだのはメキシコだ。5月末、トランプ氏は不法移民対策が不十分だとしてメキシコからの全輸入品目に関税を課し、段階的に税率を引き上げると発表した。メキシコの輸出額の8割は米向けだ。北米自由貿易協定(NAFTA)による関税ゼロを前提にした経済は高関税がかかれば崩壊の恐れもあるだけにメキシコは窮地に陥った。

関税という脅しを受けてメキシコ政府は中米からの不法移民流入防止のための警備に加え、米入りして難民申請を求める不法移民の送還と待機を受け入れた。すでに1月から「移民の人権に配慮する」(外務省)として受け入れを開始していたが、6月に正式に合意すると送還者数は急増。7月末には2万7千人を超えており、8月末には3万人に達したようだ。

メキシコから米入りする不法移民の4割を占める中米ホンジュラスとエルサルバドル出身者の通り道であるグアテマラも標的にした。全体の4割を占める米向け輸出品への関税と、国内総生産(GDP)の10%にあたる主に在米移民からの送金に手数料などを徴収すると脅しをかけ、両国から米への難民申請を希望する移民の手続き実施と待機を認めさせたのだ。

2カ国を緩衝地帯にしても米の動きは止まらない。国土安全保障省のマカリーナン長官代行は8月にグアテマラを訪問した際、ホンジュラス、エルサルバドルにもグアテマラと同様に隣国から米への難民申請を求める移民の手続きと待機を受け入れる協定を結ぶように交渉していることを明らかにした。さらにコスタリカやパナマとも協議を始める考えも示した。

しかしトランプ氏の思惑通りに移民の北上が止まるとは限らない。合意したとは言え、グアテマラ自身が治安や経済に問題を抱え多くの移民を生んでいる。急に移民の受け入れと言われても十分なインフラもない。他の中米諸国も同様だ。米入りしての難民申請が出来なければ国境警備隊に見つからない、より危険なルートでの入国が増えだけとの見方もある。

移民足止めに必死な一方、米は移民の抑制自体には関心が薄い。5月に国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)はインフラ投資拡大や、地域の経済統合による雇用送出による移民抑制策を発表した。メキシコ政府は米も賛同しているとするが、米側からの発表はない。トランプ氏にとって移民問題は米に来なければそれでいいというだけに見える。

(メキシコ北部シウダフアレスで、丸山修一)

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