シュロが育んだ家庭用品の街 和歌山・海南市
とことん調査隊

関西タイムライン
コラム(地域)
2019/9/24 7:01
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和歌山県海南市はトイレ、バス、キッチン用品などを生産する家庭用品産業の有力産地だ。市はホームページで「圧倒的シェアを誇る」とアピールしている。人口5万人の郊外の街で、なぜ、生産が盛んなのか。どれほどの実力なのか。現地を訪ねてみた。

JR和歌山駅から紀勢本線の各駅停車で14分。海南駅に到着する。駅から車で10~20分ほどの場所に、有力な家庭用品メーカーが集まる。

ユニークな製品を次々と生み出すのが小久保工業所だ。包丁やまな板なしで豆腐を切るカットプレートなどを販売しており、ショールームには600~700種類の商品が並ぶ。

タカショーは園芸資材から塀、門扉、照明器具まで取扱商品数は約10万に及ぶ。高岡伸夫社長は「こんな業態の企業は日本にはない」と力を込める。

海南特産家庭用品協同組合を訪ねると、山東昭彦事務局長が「現在、96社が加盟している」と教えてくれた。NTTタウンページが電話帳で調べたところ、和歌山県の日用品雑貨製造卸の登録件数(2015年、人口10万人当たり)は全国で断トツの14.5件(2位の福井県は3.7件)だった。

なぜ、海南に家庭用品メーカーが集まるのか。小久保工業所の小久保好章社長は「タワシやホウキの原料になるシュロの産地だったからだ」と話す。タカショーの高岡社長も教えてくれた。父親からシュロ縄の店を引き継ぎ、新たに設立したのが同社だったという。

シュロはヤシ科の植物で、タワシやホウキなどに利用されてきた。同組合が発行した「海南地方家庭用品産業史」によると、江戸時代にはシュロ縄を各地へ出荷し、かなりの利益を上げていたという記述が「紀伊続風土記」にあるという。明治時代にはタワシなどの生産地として全国に知れわたっていたらしい。

和歌山大学経済学部の藤田和史准教授は「海南周辺の住民はシュロの植樹やロープ製造の機械化などに取り組んだ」という。こうした努力が実を結び、海南は有力産地となったようだ。

では、どれくらいのシェアを占めているのか。和歌山県のサイトをみると「(県全体の)全国シェアは80%を超える」との記述がある。その根拠を聞くと、県や海南市、組合の担当者も「はっきりしない」との答えだった。

経済産業省の工業統計調査を調べてみた。品目別統計表をみると「日用雑貨・台所用品・食卓用品・浴室用品」の17年の出荷額は和歌山県が約91億円。全国では3527億円なのでシェアは3%程度だ。家庭用品といっても品目が多岐にわたり、集計の仕方で数値は変わってくるが、どうも「家庭用品で海南市が圧倒的なシェア」とまでは言い切れないようだ。

ただ、家庭用品メーカーが集まり、有力な産地になっているのは確かだ。現地を訪れて実感したのは「家庭用品メーカーといってもいろいろある」ということだ。

シュロで製品を作っている企業もまだ残っていた。高田耕造商店だ。出されたタワシを触ると柔らかい。指で触れても痛くない。肌触りの良さで体を洗うタワシが人気を呼んでおり、1個5000円程度で売れているという。

100円ショップ用商品から高額商品まで、素朴な品物からアイデア商品まで。「多様な需要に柔軟に対応できるのが海南の強み」と和歌山大学の藤田准教授は話す。

海南市の産地は安価な外国製品に押されているようにも見える。小久保工業所の小久保社長は「最近は中国の人件費高騰や自動化でコストの差は縮まっており、日本ブランドで勝負できる」と力を込める。

(細川博史)

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