スポーツ界の格差是正 女性指導者を増やそう
ダイバーシティ進化論(村上由美子)
ラグビーワールドカップが開幕した。日本を訪れる外国からの観客は最大40万人と予想されている。今回は男子チームのみだが、実は女子に関する興味深い決定が先月発表された。次回の2021年ニュージーランド杯から"女子"が除かれ"ラグビーワールドカップ"と男子同様の名称となるのだ。
"女子"という言葉が性別に帰する偏見や先入観の原因になる可能性があり、男女同様に競技できるラグビーを推進するために名称を変更したと、国際競技連盟のワールドラグビー(WR)は説明した。女子より男子スポーツチームに多く資金を提供しがちな企業スポンサーにも待ったをかける狙いだ。スポーツ界における男女格差の是正に向けた動きは世界中で広がっている。
この夏、女子サッカーワールドカップで2大会連続優勝を果たした米国。選手たちは全米サッカー協会が女性選手を差別しているとして訴訟を起こした。興行収入は米女子チームが男子チームを上回るにもかかわらず、報酬面で著しく不当な扱いを受けているというものだ。プロモーション費用などでも男子チームの方が優遇されているという。サッカー日本女子代表も世界を舞台に好成績を残しているが、男性選手との待遇の差はどうであろうか。
経済協力開発機構(OECD)の統計によると、運動に費やす時間はおしなべて女性の方が少ない。日本の場合、女性の平均運動時間は男性の半分だ。心身ともにメリットの大きいスポーツを性別を問わず推進するには、スポーツのあらゆる面からジェンダーステレオタイプを撲滅していかなければならない。
新たに就任した橋本聖子五輪相は女性活躍担当も兼ねる。日本女子初の冬季五輪メダリストとなるなどパイオニアとして活躍した大臣にとって、女性選手が正当な評価を受け活躍できる環境整備は自らの悲願でもあろう。五輪開催に向けて人々のスポーツへの関心が高まる今だからこそ、スポーツ界における男女平等の実現に取り組んでほしい。
16年のリオデジャネイロ五輪では出場選手の45%が女性だった。その比率は来年の東京五輪でさらに高まると予想される。国際オリンピック委員会(IOC)は参加選手の男女比率はもとより、監督や主催者側など指導的な立場で女性が活躍しているかにも注目している。

[日本経済新聞朝刊2019年9月23日付]
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