米短期金利に上昇圧力、FRB苦悩 4日連続資金供給
量的緩和再開の観測も

2019/9/20 13:00 (2019/9/20 22:26更新)
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FRBが18日に利下げしたにもかかわらず短期金利は上昇(パウエル議長)=AP

FRBが18日に利下げしたにもかかわらず短期金利は上昇(パウエル議長)=AP

【ニューヨーク=後藤達也】米連邦準備理事会(FRB)が18日に利下げしたにもかかわらず、米短期金利に上昇圧力がかかっている。市場で資金の出し手が急減し、短期資金の需給が逼迫しているためだ。FRBの資産縮小や準備預金のしくみなどが複雑に絡み合っており、金利の乱高下は当面続く可能性がある。FRBは短期金利の上昇を抑えるため、連日で臨時の資金供給を実施。2014年に終了した量的緩和を再開するとの観測も出てきた。

FRBは銀行間で短期資金を貸し借りする市場金利であるフェデラルファンド(FF)金利について誘導目標を設けてコントロールしている。FRBは18日、目標を「2.00~2.25%」から「1.75~2.00%」へ引き下げると決定したが、今週に入って以降、3%を上回る取引が頻発するなど、金利の上昇圧力が高まっており、対応に苦慮している。

FF金利上昇の起点となったのが、米国の銀行が短期資金を調達するうえで主流となっているレポ取引の金利上昇だった。レポとは国債などを担保に短期資金を貸し借りする取引。17日、このレポ金利が一時的に10%まで急上昇する異常事態が生じた。

FRBの金融調節を担当するニューヨーク連銀は同日、レポ市場で資金調達する民間金融機関に、国債などを担保に短期資金を供給する緊急の金融調節に踏み切った。緊急措置の発動は約11年ぶり。資金供給で金利はやや落ち着いたものの、なお需給は逼迫が続く。同連銀は金利上昇を抑えるため、20日も4日連続となる臨時の資金供給を実施し、750億ドルを供給した。

今週に入って短期金利が急上昇したのは一時的な要因と構造的要因に分けられる。一時的な面では国債の発行や法人税の納付が重なり、銀行システムから一時的に資金が大きく減った。このため、資金調達ニーズが強まる一方で、資金の出し手が減ってしまった。

構造的な背景の一つにFRBの資産圧縮がある。過去の量的緩和で膨らんだ国債など保有資産の「正常化」を目指すFRBは2年ほど前から資産圧縮を進めてきた。その結果、潤沢だった金融機関の余剰資金も減った。

余剰資金の主要な置き場となるFRBへの準備預金は8月時点で1.58兆ドルと2年前より34%減った。銀行間での短期資金をやりとりする市場にお金が回りにくくなり、急な資金需要の高まりに対応する柔軟性が低下した。

もう一つは準備預金のしくみだ。FRBは準備預金に1.8%の利息を付けている。民間銀行にとっては無リスクの中銀に預けるだけで1.8%の金利がつくため、魅力的な運用先と言える。

金融機関は余剰資金を短期市場で他の銀行に貸すこともできるが、金融規制上はリスク資産と見なされるうえ、事務的なコストも発生する。市場運用のほうが多少金利が高くとも「準備預金を選ぶ金融機関は少なくない」(金利トレーダー)。

このため銀行間市場での資金の出し手が細り、四半期ごとの企業の法人税納付で市場の資金が国庫に吸い上げられるなど一時的な資金減少があった場合に、需給のバランスが崩れて金利が急上昇しやすくなっている。

特定の銀行に信用不安は起こっておらず、パウエルFRB議長は「経済に影響はない」と強調する。だが巨額の資産を持ちつつ、金利を巧みに操ることの難しさは強まっている。短期金利のコントロールは中銀の金融調節の本丸であり、制御しづらくなっていることは深刻だ。

月末にかけて決算対応で短期市場での主な貸し手である銀行は一段と短期市場での資金運用を控える可能性がある。FRBが短期金利を誘導目標に収めるため、臨時の資金供給を頻繁に実施しなくてはならないケースも想定される。

FRBは別の対応として、18日に準備預金の金利を2.1%から1.8%に引き下げた。引き下げ幅は0.3%と、政策金利である市場金利の誘導目標の0.25%より大きくした。銀行が準備預金に預けるメリットを少し弱めて、短期市場での運用に資金を回すように促し、資金需給の逼迫を和らげる狙いだ。

FRBが再び資産を拡大する可能性も浮上している。FRBが国債を買えば銀行システムに資金が巡り、銀行間市場の需給のひずみの解消につながるからだ。パウエル議長は18日の記者会見で「考えていたよりも早く資産を拡大する可能性がある」と述べた。

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