MaaS、新興勢が下支え 海上移動アプリやAI配車

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2019/9/23 0:00
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国内で次世代移動サービス「MaaS(マース)」の実験が始まっている。スタートアップ企業が中心となっており、船など移動手段の予約から決済まで担ったり、人工知能(AI)で乗り合い車両を配車したり。観光を軸に、過疎地域などの課題解決のニーズもあり、シーンに合った仕組みづくりを急いでいる。

クレメンテックは乗り合いEVの運行を管理(北海道厚沢部町)

クレメンテックは乗り合いEVの運行を管理(北海道厚沢部町)

■スキームヴァージが海上移動アプリ

瀬戸内海に浮かぶ直島や小豆島で今春から、アートイベント「瀬戸内国際芸術祭」が開かれている。各国から230組の作家らが参加。このイベントを訪れる人のために、ソフトウエア開発のスキームヴァージ(東京・文京)が交通アプリを提供している。

アプリを使えば、好みのアートの写真から行きたい場所を選び、島をめぐる旅程を作れる。フェリーや高速艇を検索したり、クルーザーによる乗り合い海上タクシーを予約したりできる。

直近の利用者は約千人まで増えた。嶂南達貴・最高経営責任者(CEO)は「瀬戸内以外の地域に広げたい」と話す。

瀬戸内の試みは国土交通省が補助する全国19のMaaS実験の一つに発展した。ANAホールディングスやJR四国が参画し、一歩を踏み出した。目標としてスキームヴァージのアプリを基盤に陸上交通、さらに航空便をつなぎたいという。

スキームヴァージは2018年に設立された。メンバーの一人が瀬戸内に移住し、かかわりが深まったことをきっかけに、MaaSで問題になりがちな地域の交通機関などとの調整役を買って出ている。「プロジェクトの運用レベルで現場の連携を担っていきたい」と嶂南CEOは話す。

MaaSでは、複数の交通機関から時刻表や料金のデータを出してもらうなどサービス作りに手間がかかり、フットワークの軽い新興企業に活躍の余地がある。スキームヴァージの場合は各機関からデータ提供を受けるほか、自社でデジタル化したり購入したりして集めている。

矢野経済研究所(東京・中野)は、カーシェアリングやアプリなど国内MaaS市場が30年に6兆3600億円になると試算した。18年は1千億円を切る。成長の見込まれる分野の一つがオンデマンド型の乗り合いだ。

■未来シェア、乗り合い車両を配車

公立はこだて未来大学発のスタートアップ、未来シェア(北海道函館市)は乗り合いの実験に欠かせないと引っ張りだこ。静岡県で2~6月に実施した2件の実験ではタクシーを使った。走行ルートを常時把握し、乗りたい人をどこでいつ、拾えるかをAIで計算する。ウーバーテクノロジーズのような技術だ。運転手不足に苦しむ地域にとって助け舟になる。

交通インフラにまつわる課題は新興国に多い。クレメンテック(東京・千代田)はフィリピン・マニラ市で16年から、電気自動車(EV)を使った公共交通システムを手掛け、商用化した。今度はそれを日本に生かす。北海道厚沢部町で8月、住民の実験にシステムを提供した。

マニラでは、需要の多い朝・夕は決められたルートで運行している。需要の少ない昼間は必要に応じて台数を調整する「オンデマンド型」で配車する。北海道でも、乗り合いの小型EVバスの運行を管理した。

駅やバス停から目的地までの短い距離は、ループ(東京・渋谷)のシェア型電動キックボードなどの出番となる。

日本でMaaSが実際の商用サービスとなっていくのはこれから。スキームヴァージも海上タクシーの予約・決済の手数料は現状は取っていない。アプリの普及を優先し、それによる移動の改善効果もみながら、有料化を検討する。アプリの利用が広がり、ビッグデータの蓄積が進めば、それを解析して交通機関や観光事業者の収益を伸ばす仕組みを作れるとみており、まずは利用者獲得に結びつく地域の関係企業との連携拡大を急ぐ。

▼MaaS モビリティー・アズ・ア・サービスの略。IT(情報技術)を使い、あらゆる手段を使って移動をつなぐサービスを指す。個別の交通機関の予約・決済サービスなども含まれる。日本では実験の段階で、海外で先行して商用化が進む。先駆けといわれるフィンランドのマース・グローバルは2017年、鉄道やバスといった公共交通やタクシーなどが乗り放題となる月額制サービスを始めた。

(武田敏英)

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