東京電力旧経営陣に無罪 東京地裁の判決要旨

2019/9/19 23:04
保存
共有
印刷
その他

福島第1原子力発電所事故を巡る強制起訴事件で東京電力の旧経営陣3被告を無罪とした19日の東京地裁判決の要旨は次の通り。

東京電力旧経営陣の強制起訴訴訟の判決公判に臨む、東京地裁の永渕健一裁判長(19日、東京地裁)

【争点】

主たる争点は被告らに津波襲来の予見可能性があったと認められるか否かだ。結果の重大性を強調するあまり、あらゆる可能性を考慮して必要な措置を義務付けられれば、法令上は認められた運転が不可能になる。

【長期評価】

政府の地震本部は2002年7月、「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価」を公表した。福島県沖でもマグニチュード8.2前後の地震が起きる可能性があるとしていた。

11年3月初旬時点で長期評価は地震発生の可能性の具体的な根拠を示さず、専門家や内閣府が疑問を示していた。中央防災会議や自治体の防災計画にも取り込まれなかった。客観的な信頼性、具体性があったと認めるには合理的な疑いが残る。

【予見可能性】

原子炉等規制法や審査指針などからすると、原発の自然災害に対する安全性は「どのようなことがあっても放射性物質が外部に放出されることは絶対にない」といった極めて高度なレベルではなく、合理的に予測される災害を想定した安全性の確保が求められていた。

武藤栄元副社長や武黒一郎元副社長は長期評価に基づいて津波の数値解析をすると15.7メートルになることなどを認識していたが、部下から長期評価の見解に根拠がないと報告を受けていた。勝俣恒久元会長は10メートルを超える津波襲来の可能性を示唆する見解があると認識していたが、内容や信頼性は認識していなかった。

直ちに工事に着手し、完了まで運転を停止しなければ事故が起こり得ると認識していなくても不合理とは言えない。結果回避義務を課すにふさわしい予見可能性があったとは認められない。

指定弁護士は情報収集義務を尽くしていれば津波の襲来を予見できたと主張する。しかし情報を収集・補充しても上記内容以上の情報が得られたとは考えがたい。

東電は業務分掌制が採られ、一次的に担当部署に所管事項の検討、対応が委ねられていた。被告ら3人は担当部署から上がってくる情報や検討結果などに基づいて判断すればよい状況だった。

【結論】

自然現象に起因する重大事故の可能性が一応の科学的根拠をもって示された以上、安全性確保を最優先し、事故発生の可能性がゼロないし限りなくゼロに近くなるように、必要な結果回避措置を直ちに講じるということも社会の選択肢として考えられないわけではない。しかし、本件事故発生前までの時点で当時の法令上の規制や国の指針、審査基準は絶対的安全性の確保までを前提にしていなかった。3人は東電の取締役という責任を伴う立場だったが、規制の枠組みを超えて刑事責任を負うことにはならない。〔共同〕

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]