原発事故、刑事責任を厳格判断 津波試算「信頼性に疑義」

2019/9/19 21:55
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判決を受け、東京地裁前で「全員無罪」の紙を掲げる人たち(19日)

判決を受け、東京地裁前で「全員無罪」の紙を掲げる人たち(19日)

福島第1原子力発電所事故の責任を巡り、東京電力の旧経営陣3人に東京地裁は19日、無罪を言い渡した。2年を超える公判で争われたのは3人が巨大津波を予見し、有効な対策を打てたのか。判決は検察官役の指定弁護士が予見可能性の根拠とした地震の予測や津波の試算について「信頼性に疑義がある」と判断、それぞれの刑事責任を問うのは難しいと結論づけた。指定弁護士は今後、控訴するかを検討する。

「被告人はいずれも無罪」。19日午後1時15分、東京地裁で最も広い104号法廷で行われた判決公判で永渕健一裁判長が言い渡すと、勝俣恒久元会長(79)らはわずかに頭を下げて裁判長に一礼した。

指定弁護士は公判で、政府の地震調査研究推進本部が公表した「長期評価」に基づき、東電子会社が2008年に「最大15.7メートルの津波が襲来する」などとする試算を行い、3人も報告を受けていたと指摘。3人は「津波を予見でき、的確に対策を実行すれば事故は防げた」と訴えていた。

永渕裁判長は仮に防潮堤工事などの対策を講じていても、原発に津波をもたらした11年の東日本大震災の前に完了したかは不明と指摘した。「事故回避には原発の運転停止を講じるほかなかった」と判断した。

その上で裁判長は運転停止に踏み切るだけの信頼性や、具体性のある根拠があったかを検討。「長期評価」については「十分な根拠を示していたとはいえない」と認定した。東電子会社による試算は長期評価に基づいており、「予見可能性があったと認定することはできない」と結論づけた。

指定弁護士は3人に対策を進めるための「情報収集義務」があったとも指摘したが、判決は「基本的に担当部署から上がる情報に基づき判断をすれば良かった」と認定。情報収集などに落ち度はなかったとして、指定弁護士側の主張を退けた。

永渕裁判長は休憩を挟んで約3時間に及んだ判決読み上げの最後に「当時の社会通念や法規制は、原発の絶対的安全性の確保までを前提としていなかった」と言及した。事故の可能性をゼロにするために原発停止の判断をしなかった3人が「当然に刑事責任を負うということにはならない」と締めくくった。

元検事の高井康行弁護士は「一般的に、業務上過失致死傷罪が成立するためには抽象的な危惧感ではなく、対策を講じる義務を生じさせるほどの具体的な予見可能性が必要になる」と話す。「検察も捜査を尽くし、具体的な予見可能性は認められないとして不起訴と判断した」とした上で、「今回の無罪判決は巨大津波という未曽有の自然災害の発生を事前に具体的に予見できたと立証することの難しさを改めて裏付けた」と語った。

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