ベトナムIT企業のCMC、スマート工場を事業の柱に

日経産業新聞
アジアBiz
2019/9/20 2:00
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NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

ベトナムのIT(情報技術)2位のCMCコーポレーションは韓国サムスン電子グループから25%の出資受け入れを決めた。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」、人工知能(AI)を強化し、工場のスマート化を事業の柱とする。世界に足場があるサムスンと組むことで海外売上高比率を2023年に倍増させ、3割強に引き上げる。グエン・チュン・チン会長兼最高経営責任者(CEO)は「今後5年間で海外でも勝負できるグローバル企業になる」と強調した。

サムスンはベトナムで複数の巨大工場を構える(バクニン省のスマホ工場)

サムスンはベトナムで複数の巨大工場を構える(バクニン省のスマホ工場)

7月下旬にサムスン電子のシステム開発子会社、サムスンSDSがCMCの第三者割当増資を引き受けることを決めた。出資額は約40億円。現地メディアによると外国企業によるベトナムIT企業の投資では過去最大になるという。

チンCEOは日本経済新聞社の取材に応じ、サムスン側から出資の意向があったことを明らかにした。その上で「海外市場開拓のため、サムスングループの力を借りたい」と強調した。IT分野の競争環境が目まぐるしく変化する中「サムスンと戦略がほぼ同じで両社が組むことで技術力を高め、意思決定をより早くできる」と語った。

サムスンはベトナム北部に2カ所のスマートフォン工場を構え、年1億5千万台以上を生産している。南部には家電工場があり、関連部品メーカーは全土に多数進出している。サムスン製品はベトナムの総輸出の約25%を占めている。

取材に応じるCMCコーポレーションのチン会長兼最高経営責任者(CEO)

取材に応じるCMCコーポレーションのチン会長兼最高経営責任者(CEO)

CMCとサムスンSDSは2016年に業務提携。CMCはサムスン工場のシステム構築やあらゆるモノがネットにつながる「IoT」サービスなどを手掛け、信頼関係を構築してきた。ベトナムには約200社のサムスンの協力企業があり「まずはこれらの企業との取引を拡大したい」と述べた。

両社は資本提携を通じてそれぞれの企業が持つIT技術を融合。「IoT」や人工知能(AI)などといった技術を使い、工場内の生産ラインを自動制御する「スマート工場」のビジネスモデルを深化させる。国内での実績が積み上げられれば「海外にも広げていくことができる」とした。

CMCは23年に売上高を現在の4倍強の25兆ドン(約1150億円)にすることをめざしている。日本では横浜市に拠点を構え引き続き最重要市場とみており、23年までに従業員を現在の10倍の500人にする。さらにサムスンと組むことで「海外売上高全体で現在の2倍以上に増やしていく」と語った。

チンCEOはベトナムのIT産業の潜在力にも言及した。1月にサイバーセキュリティー法が施行。国内のネット利用者の個人情報を国内のサーバーに保管することを義務付けており「セキュリティー関連需要は一段と高まる」と述べた。また、次世代通信規格「5G」のサービス開始も「追い風になる」とした。

CMCコーポレーションは1993年に設立。ベトナムで2番目に大きいIT企業で欧米や日中韓、東南アジアなどで企業のシステム構築やソフトウエア開発などを手掛けている。18年の売上高は5兆6千億ドン(約260億円)、税引き前利益は3千億ドン(約14億円)。ホーチミン証券取引所に上場する。

■韓国企業、大型投資相次ぐ

ベトナムでは韓国企業の大型投資が目立つ。5月には韓国大手財閥のSKグループがベトナム複合企業最大手のビングループに約1100億円、韓国KEBハナ銀行は7月にベトナム投資開発銀行(BIDV)に約950億円の出資でそれぞれ合意している。日本企業の投資が鈍る中、韓国企業のベトナム市場での存在感が高まっている。

SKが6.1%出資したビンは不動産や小売店などを手掛けるベトナム最大の複合企業。6月には自動車生産にも乗り出し、航空市場への参入も狙っている。SKは18年9月に大手食品メーカーのマサングループに約500億円を投じ9.5%の株式を取得した。

韓国KEBハナ銀行はBIDVの15%の株式を取得した。製造業の大型投資も目立つ。韓国家電大手のLG電子は年内をメドに韓国でのスマートフォンの生産を停止。ベトナム北部の工場の生産能力を従来の約2倍の年1100万台に引き上げる。

一方で日本企業の動きは鈍い。ベトナム政府によると、日本の1~6月の直接投資認可額は前年同期比7割減の19億5千万ドル(約2000億円)。国・地域別で香港、韓国、中国などに次いで5位に低迷している。

ベトナムのような新興国での企業のデューデリジェンス(資産査定)は簡単にはいかない。投資や出資の判断には大胆な経営判断が求められる。「日本勢は意思決定に時間がかかるため、特に大型案件でチャンスを逸しているケースが多い」(ベトナムの証券会社関係者)という。

(ハノイ=大西智也)

[日経産業新聞 2019年9月17日付]

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