FRB、景気先行きに迷い 年内追加緩和で二分

2019/9/19 20:30
保存
共有
印刷
その他

【ワシントン=河浪武史】米連邦準備理事会(FRB)が18日、7月末に続き0.25%の利下げに踏み切った。パウエル議長は貿易戦争の影響を不安視して「景気が減速すれば追加利下げが適切だ」とさらなる金融緩和に含みを持たせた。ただ、FRB内には足元の雇用や消費は底堅く、物価も上昇基調にあるとして反対論も強まる。トランプ米大統領や市場からの緩和圧力は根強く、綱渡りの政策運営を迫られる。

「景気後退まで余力を残そうというのは間違いだ。経済が弱まれば積極的に動く準備がある」

パウエル議長は18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、追加利下げの可能性を示唆した。短期金利上昇を受けて保有資産拡大を検討する構えも見せるなど、市場の期待に配慮してみせた。

米景気は拡大局面が戦後最長の11年目に突入し、ダウ工業株30種平均も最高値をうかがう。それでも2会合連続の利下げに踏み切ったのは、貿易戦争による景気減速リスクに「予防的に動く方が適切」(パウエル氏)と判断したためだ。

だが18日のFOMCでは投票メンバー10人のうち、3人が反対票を投じた。2人は「雇用の逼迫が物価を押し上げるだろう」(ボストン連銀のローゼングレン総裁)と、7月に続いて利下げに反対。逆にセントルイス連銀のブラード総裁は0.5%に利下げ幅を拡大すべきだと主張した。

実際、米景気は分水嶺にある。失業率は3%台とおよそ半世紀ぶりの低水準で、個人消費も8月の小売売上高が前年同月比4%増と底堅い。消費者物価指数(CPI、食品・エネルギー除く)も2.4%上昇と1年ぶりの高い伸びを記録した。

一方、中国などとの貿易戦争は企業部門を強く下押しし、輸出は4~6月期に前期比年率5.8%も減少。設備投資も3年ぶりにマイナスに転落した。「堅調な内需」と「弱含む外需」の綱引きを、金融緩和でかろうじて支える構図だ。

だが一段の利下げには慎重論もくすぶる。米国の企業債務の国内総生産(GDP)比は0.7倍を超え、2008年の金融危機時の水準に高まった。ローゼングレン氏は企業債務が過大になるリスクと、本格的な景気後退期に利下げ余地を失う懸念を理由に挙げて「現在は政策金利を据え置く時期だ」と主張する。

FOMCは18日、先行きの金融政策シナリオを公表したが、19年末までの利下げ予測は会合参加者17人のうち7人どまり。5人は据え置き、5人は利上げを見込み、現時点では半数以上が追加利下げに反対だ。

利下げシナリオに迷いを残すFRBに対し、トランプ米大統領はFOMC直後から「FRBは根性なしで先見性がない!」とツイッターで批判した。トランプ氏は人事権を武器にFRBへの介入を強める構えで、0.5%の利下げを要求したブラード氏を「ホワイトハウスがパウエル氏の後任議長として検討している」(政権関係者)

市場も株価を重視するトランプ氏の主張通りにFRBは動くと見なし、年末までに1~2回の追加利下げを見込んでいる。FRBは追加利下げの可能性を否定すれば株式相場の下落を招き、実体経済を悪化させるジレンマを抱え込む。

基軸通貨ドルを抱えるFRBの利下げは世界景気にも強く影響する。ブラジル中央銀行は18日、政策金利を0.5%下げて2会合連続の利下げを決断した。米利下げでドルが下落すれば、資本流出リスクが少なくなる新興国の金融緩和を後押しし、景気を下支えする効果がある。

一方、各国の中央銀行が緩和に動くと予測する企業が社債発行を増やすなど債務膨張リスクも拡散しており、急激な方針転換も混乱をもたらしかねない。FRBの迷いは世界の金融市場にも不安定要因になる。

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]