演劇の豊岡へ祭典「第0回」 プレ企画を観た
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2019/9/20 7:01
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兵庫県北部の豊岡市で2020年から開催される「豊岡演劇祭」に向けたプレ企画、「第0回豊岡演劇祭」が9月6~8日に開催された。フェスティバルディレクターの平田オリザ率いる青年団の「東京ノート・インターナショナルバージョン」の世界初演や、東京を拠点に活動する気鋭の劇団、柿喰(く)う客の新作初演など魅力的なプログラムをそろえ、県内外からのべ1427人が訪れた。

7カ国・地域の俳優が出演した青年団の「東京ノート・インターナショナルバージョン」(豊岡市の城崎国際アートセンター)=igaki photo studio撮影

7カ国・地域の俳優が出演した青年団の「東京ノート・インターナショナルバージョン」(豊岡市の城崎国際アートセンター)=igaki photo studio撮影

「予想の1.5倍のペースでチケットが売れ、狙い通り関西圏からの参加者が多かった」と平田。関西在住でも城崎には来たことがない人は意外に多く、演劇祭は呼び水になる。「ポテンシャルはまだまだある」と手応えを感じた様子だ。

城崎国際アートセンターのホールでは平田の代表作、「東京ノート」の国際版を上演。1995年に岸田國士戯曲賞を受賞した同作は、近未来の美術館を舞台に、様々な来訪者の人間模様が淡々とした会話を通じて描かれる。これまで13カ国語に翻訳され、台湾、タイ、フィリピンで現地版の翻案上演をしてきた。

■国際版を初演

平田が「これまでの集大成」という今回は、日本、韓国、米国、ウズベキスタンなど7カ国・地域の俳優が出演。2034年の東京を舞台に、日本人の家族や訪日観光客、留学生らが行き交い、言葉を交わす。日本語と英語の字幕と、7カ国語が飛び交う国際色豊かな舞台は国際演劇祭を先取りするよう。世界初演とあって、遠方からの集客にも一役買ったようだ。

喪服姿の俳優たちが勢いのある舞台を繰り広げた、柿喰う客の「御披楽喜」(豊岡市の出石永楽館)=igaki photo studio撮影

喪服姿の俳優たちが勢いのある舞台を繰り広げた、柿喰う客の「御披楽喜」(豊岡市の出石永楽館)=igaki photo studio撮影

出石永楽館では、柿喰う客が新作「御披楽喜(おひらき)」を上演。恩師の十三回忌に集まった13人の美大の同窓生を巡る物語で、明治期に建てられた古い芝居小屋と、勢いのある若手劇団のミスマッチが興味をそそる。

中央に置いたスピーカーのほかに舞台装置はほとんどなく、照明ではっきり見えないが舞台後方の楽屋などがむきだしのまま。俳優たちは全員喪服姿で、スピード感のあるセリフと動きで観客を圧倒する。青年団と対照的なアグレッシブな演劇に、はじめ戸惑った観客も次第に引き込まれていた。劇団代表の中屋敷法仁は「永楽館の雰囲気は僕らのスタイルに合う。エネルギーをもらった」と話す。

このほか、アートセンターのスタジオで2劇団がタイプの異なる一人芝居を上演。会場をはしごすれば、1日で4作品が楽しめた。同県丹波市から訪れた男性は「客席と舞台の距離が近く、路上パフォーマンスのような臨場感があった」と声を弾ませた。

■周遊性に課題

課題の1つは、観客の周遊性だ。アートセンターはJR城崎温泉駅から徒歩約20分、永楽館は豊岡駅などからバスで約30分と、交通の便はあまりよくない。また、車で1時間程度の両会場を直接結ぶ公共交通機関はない。今回は駅前と各会場を結ぶ臨時バスを上演時間に合わせて運行し、参加者は無料で利用できた。

第1回は5~7組の招待団体と10組程度の自主参加を見込む。江原駅近くに設ける青年団の劇場や、豊岡駅周辺も会場になる予定で、参加者は市内各所を巡ることになる。トヨタ・モビリティ基金などの協力で無料の循環運行サービスや小型電気自動車の貸し出しも実施し、「最適な移動のあり方を研究する」(平田)。

「10年で世界有数の国際演劇祭」という目標に向けての最初の一歩。豊岡を演劇の街にするという壮大な計画に期待が高まる3日間だった。(小国由美子)

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