名古屋中心部の住宅地価、渋谷並み水準に リニア控え大型開発進む
中部3県19年基準地価

2019/9/19 17:04
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名古屋市中心部で進む再開発が住宅需要を押し上げている。国土交通省などが19日に発表した2019年7月1日時点の基準地価は、愛知県の住宅地で前年比0.9%上昇した。プラスは2年連続。県内上昇率1位の名古屋市中区錦1では1平方メートルあたりの価格が東京都渋谷区並みの水準に達した。27年予定のリニア中央新幹線開業を控え、地価上昇が続いている。

上昇率の高かった錦周辺では、複合施設の建設が進む(名古屋市中区)

都道府県別でみると愛知県の上昇率は沖縄(6.3%)、東京(2.5%)、福岡(1.7%)に次ぐ4番目だった。一方、少子高齢化で人口減少が進む地域では価格下落が止まらず、二極化が進んでいる。

名古屋市内の住宅地価は前年比2.1%上昇と7年連続のプラスとなった。県内の上昇率1位は名古屋市中区錦1丁目3番28号(25.4%)で、価格は1平方メートルあたり106万円だった。東京都内で千代田区、港区、中央区に次ぐ上位で、富裕層が多く住む渋谷区の平均(114万円3千円)に迫る水準だ。

少子高齢化を背景として全国的に住宅地の地価が伸び悩むなか、同地点の上昇率は全国6位だった。上昇率上位の沖縄や北海道はインバウンド効果で地価上昇が続いているが、同地点付近は職住近接のニーズから大型住宅の開発が進み、地価を押し上げている。

錦2丁目では3月、約340戸の住居が入る大型複合ビルが着工した。野村不動産などが開発し、21年度の完成を見込んでいる。「駅に近い物件が50~60代の富裕層を中心に人気を集めている」(同社の田中克弥・名古屋支店長)。高層階は価格上昇を見込んだ投資需要も堅調だ。

ほかに上昇が目立つのは名古屋駅西側エリアで、3地点が8%台の伸びだった。名駅西地区はこれまで東側に比べ開発が遅れており、開発は小規模ホテルなどにとどまっていた。近年はリニア新駅建設に伴う用地買収や再開発が見込まれている。大きな伸びを見せた松原町は名駅付近にありながら比較的地価が安く、「低層マンションの需要が高い」(三幸エステートの妹尾哲也・名古屋支店長)という。

中心部だけではなく、市郊外にも地価の上昇が広がっている。港区が08年の調査以来11年ぶりにプラスに転じ、市内全16区で上昇となった。港区の名古屋港周辺では複数の再開発計画が進む。18年9月には港区役所そばに大型商業施設「ららぽーと名古屋みなとアクルス」が開業。生活環境が充実したことで付近で住宅開発の機運が高まり地価を押し上げた。

名古屋市以外で上昇率の上位に名を連ねたのは知立市(3.6%)や刈谷市(3.4%)。両市は名古屋市や、自動車関連企業が多い豊田市に1時間以内で行ける。通勤の利便性を重視するサラリーマンらの支持を集めている。ファミリー向けの戸建て住宅に加え、分譲マンションも増加している。

一方、知多半島や東三河地方は地価が低迷している。これらの地域は名古屋市から距離があり、リニア開業の効果も波及しにくい。高齢化と人口減少が進み、不動産業界が開発に消極的な傾向にある。18年調査に続き4~5%台の下落率となったのは南知多町(5.1%)、東栄町(4.4%)、美浜町(4.3%)だ。人口減少が急速に進む地域では下落に歯止めがかからない状態だ。

■名古屋市商業地は7.5%上昇 7年連続プラス

 名古屋市の商業地は広いエリアで地価が上昇し、前年より1ポイント高い7.5%の伸びを示した。プラスは7年連続。再開発が相次ぐ名駅から栄にかけて用地不足から地価が上昇しているほか、金山周辺も伸びが好調だ。なかでも1平方メートルあたり40万~60万円の比較的安価な土地の需要が高まっており、上位5位の地点で25%以上の上昇率を示した。
 市内で最も伸びが大きかったのは金山と栄の中間に位置する中区富士見町5番24号の27.3%。価格は1平方メートルあたり49万円だった。この地点が名古屋市で上昇率トップになるのは初めて。地下鉄駅へのアクセスの良さから低層マンションが並ぶ。不動産鑑定士の小森洋志氏は「住民向けの商業施設や事務所の需要が高い」と話す。
 上昇率2位は中村区名駅南3丁目3番44号で26.6%の伸び。2016年に劇団四季の専用劇場が開場し、17年には複合施設「グローバルゲート」が完成するなど、これまで遅れていた周辺開発が進んでいる。
3位は老舗百貨店「丸栄」跡地や中日ビル建て替えなど再開発案件が多い栄エリアの中区栄5丁目16番14号(25.7%)。4位は金山総合駅北側の市民会館と商業施設の一体開発が計画される金山エリアの中区金山1丁目2番2号(25.6%)だった。
 商業地で価格が最も高かったのは中村区名駅3丁目28番12号(1750万円)、2位は同区名駅4丁目6番23号(1070万円)。いずれも上昇率トップだった富士見町の20倍以上の価格水準だ。名駅付近はオフィス需要が旺盛で、地価が上昇している。
 オフィス仲介の三鬼商事によると、名駅エリアの8月の平均空室率は1.61%。需給均衡の目安とされる5%を大きく下回り、7カ月連続で2%を割り込んでいる。川口真弥・名古屋支店長は「人材確保に有利な名駅付近でオフィス需要が高い。空室率1%台ではほとんど紹介できる物件がない状態」と話している。

■岐阜・三重、下落続く 訪日客効果の高山や名古屋圏では上昇も

岐阜県は商業地が0.9%、住宅地が1.4%と、いずれも前年と同率で27年連続の下落となった。市街地から外れ人口減少が続く地区では周辺の大型商業施設へ顧客が流出し、商店街の衰退が進んでいる。居住者の転入も少ないため、不動産取引が低迷。商業地は継続調査84地点のうち50地点で、住宅地は同250地点のうち193地点で下落となった。

岐阜市柳ケ瀬通で1%の下落となるなど、中心市街地でも地価が下落する商業地が目立った。ただ、前年までマイナスが続いた同市日ノ出町は前年比横ばいに改善。マンション開発が進んで人口増が見込まれるため「将来的にはプラスに転じる」(不動産鑑定士の小池育生氏)とみられる。

訪日客が多く集まる高山市ではホテル用地の需要が拡大しており、同市本町で4.5%と商業地で最大の上昇率を記録した。「インバウンド効果は息が長く持続する可能性がある。県全体として今後も二極化が進展する」(同)という。

三重県は商業地が28年連続、住宅地は27年連続の下落となったが、下落幅は縮小が続いている。県南部で高齢化と人口減少を背景に下落傾向が続いている。一方、四日市市を中心とする県北部の名古屋圏で回復傾向が鮮明になってきた。

商業地の下落率は0.9%で前年より0.5ポイント縮小した。最高価格は近鉄四日市駅前の四日市市安島で9年連続。上昇率も県内最大の前年比2.9%だった。上昇率が2%以上だったのは四日市と桑名の2市の計6地点。名古屋圏の市町の地価の回復傾向が浮き彫りになった。令和の改元を追い風に参拝客が増えている伊勢神宮の内宮前に位置する伊勢市宇治蒲田は10年連続の上昇で、上昇率は1.3%だった。

住宅地の下落率は1.5%で前年より0.5ポイント改善し、最高価格の津市大谷町(9万8千円)は14年連続のトップ。県北部にけん引され、津市内に改善の兆しが表れた。ただ、尾鷲市や南伊勢町など県南部の下落傾向は止まらない。

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