北関東3県の基準地価、上昇・横ばい4割に迫る
茨城、栃木、群馬の3県が19日発表した2019年の基準地価(7月1日時点)で住宅地、商業地の平均変動率はそろってマイナスだった。工業地は茨城に続いて群馬が上昇に転じ、栃木も横ばいとなった。18年調査と比較できる継続地点(計1350地点)のうち、上昇・横ばい地点の割合は4割近くに高まったが、一部地域に限られており二極化が進んでいる。

全用途平均の下落率は茨城が0.3%(前年は0.5%)、栃木が0.7%(同0.8%)、群馬は前年と同じ0.8%だった。下落幅は年々縮まっているものの、茨城が28年連続、栃木と群馬は27年連続のマイナス圏となった。
用途別にみると、各県とも住宅地、商業地が緩やかに下落しているのに対し、工業地は茨城が4年連続の上昇、群馬も27年ぶりにプラスに転じた。栃木も28年ぶりに下落から脱した。高速道が整った首都圏に近い地域が地価の安さを武器に製造業や物流業の進出を呼び込んでいる。

一方、住宅地や商業地は各県とも上昇地点が一部エリアに限られた。茨城では人口増が続くつくばエクスプレス沿線の守谷市やつくば市の人気が引き続き高い。住宅地では鹿嶋市や神栖市など東日本大震災で液状化被害の出た地域でも上昇がみられた。復興が進んでいるほか「子育て支援など福祉施策が充実し、長年の地価下落で値ごろ感が出ている」(不動産鑑定士の外山茂樹氏)。
栃木も県人口の4分の1が集中する宇都宮市が住宅地、商業地ともに上昇地点の大半を占めた。JR宇都宮駅の東側では次世代型路面電車(LRT)の開業に加え、駅前の再開発事業も始まり「期待感が高まっている」(不動産鑑定士の森田信也氏)。駅西側への延伸計画も追い風に、住宅地・商業地とも北関東3県の県庁所在地で唯一上昇を続けている。
住宅地で佐野市の1地点が上昇したのを除くと、住宅地・商業地の上昇地点は宇都宮市と小山市、下野市の3市に限られた。JR宇都宮線が通る下野市と小山市は駅周辺で区画整理を進めて居住地を供給、人口流入につなげている。

群馬では高崎市に上昇地点が集中した。商業地では20地点中10地点、住宅地では33地点中13地点を占めた。商業地の上昇率トップ地点は18年までJR高崎駅西側だったが、今回は駅東側に移った。大型コンベンション施設「Gメッセ群馬」が20年の完成をめざして整備されるなど、特に駅東側で大型再開発が相次いでいる影響を受けた。
高崎市に次いで上昇地点が多かったのは太田市(商業地8地点、住宅地10地点)だった。上昇地点は交通の便がよい地域に偏っており、不動産鑑定士の津久井伸昭氏は「人口減や高齢化により山間部では空き家が増えて下落している地点が多いため、全体でみるとマイナスが続いている」と説明する。