東電旧経営陣3人に無罪 原発事故で強制起訴

2019/9/19 13:18 (2019/9/19 18:17更新)
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判決のため東京地裁に入る東京電力の(左から)勝俣恒久元会長、武黒一郎元副社長、武藤栄元副社長(19日午前)

判決のため東京地裁に入る東京電力の(左から)勝俣恒久元会長、武黒一郎元副社長、武藤栄元副社長(19日午前)

福島第1原子力発電所事故を巡り、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東京電力旧経営陣3人の判決が19日、東京地裁であった。永渕健一裁判長は勝俣恒久元会長(79)、武黒一郎元副社長(73)、武藤栄元副社長(69)に対し無罪(求刑禁錮5年)を言い渡した。3人は公判で無罪を主張していた。

検察官役の指定弁護人は判決後、被害者らの意向も確認したうえで控訴するか検討する方針を示した。

永渕裁判長は判決で、3人が巨大津波の可能性に関する情報を聞いた2008~09年時点で対策を講じても事故前に完了できたかどうかは不明だとし「事故を回避するには原発の運転を止めるしかなかった」と述べた。

そのうえで、巨大津波の可能性を示した政府機関の予測などに十分な信頼性、具体性はなく「津波による事故を予見可能だったとはいえない」と判断した。

裁判長は結語として「事故の結果は重大で取り返しがつかないが、当時の法規制などは絶対的安全性の確保まで前提にはしていなかった」と指摘。「責任ある立場にあったからといって、法規制の枠組みを超えて当然に刑事責任を負うということにはならない」とした。

起訴内容で、3人は巨大津波による原発事故を予見できたのに原発の運転を続け、事故で長期間の避難を余儀なくされた入院患者らを死傷させたとされた。公判では津波を予見し、防潮堤設置などの対策をとることで事故を防げたかどうかが主な争点となった。

検察官役の指定弁護士は、政府機関の長期評価に基づく東電子会社の試算結果などを挙げ、津波が予見できたと主張。2008年の試算結果は15.7メートルの津波が原発に襲来する可能性を示し、武藤氏と武黒氏は内容を把握していたと指摘した。

3人全員が出席した09年の会議でも担当幹部が巨大津波の可能性に言及しており、3人は津波を予見できたのに「原発の運転を漫然と続けた」と批判した。

旧経営陣側は「政府機関の長期評価は信頼性が低く、対策の根拠としては不十分だった」などと反論した。実際に津波が押し寄せた方角などから、試算に基づいて対策工事をしていても事故は防げなかったとも主張した。

東京電力の武藤栄元副社長(左端)、武黒一郎元副社長(右から2人目)、勝俣恒久元会長(右端) イラスト デザイン編集部 大島裕子

東京電力の武藤栄元副社長(左端)、武黒一郎元副社長(右から2人目)、勝俣恒久元会長(右端) イラスト デザイン編集部 大島裕子

原発事故を巡り、東京地検は3人を嫌疑不十分で不起訴としたが、検察審査会が14年に「起訴相当」、15年に「起訴すべき」と議決した。議決を受け、検察官役の指定弁護士が16年2月に強制起訴した。未曽有の原発事故の刑事責任を旧経営陣個人に問えるのか、裁判所の判断が注目を集めていた。

東京電力ホールディングスは東京地裁の無罪判決を受け、「刑事訴訟に関する事項については、当社としてコメントは差し控える。『福島復興』を原点に、原子力の損害賠償、廃止措置、除染に誠心誠意、全力を尽くすとともに、原子力発電所の安全性強化対策に不退転の決意で取り組んでいく」とのコメントを出した。

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