FRB議長「景気悪化なら追加利下げ」 会見要旨

2019/9/19 4:50 (2019/9/19 6:55更新)
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米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は18日、米連邦公開市場委員会(FOMC)終了後に記者会見した。発言の要旨は以下の通り。

米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長(18日、ワシントン)=ロイター

「利下げを決めた。米国経済を強く保ち、現在進行形のリスクに対して保険をかけるためにこの手段をとった」

「米国経済は良好な状態が続いている。景気拡大は11年目に入り、経済見通しも好ましい。年前半は2.5%の経済成長率だった。強い雇用、収入増、堅調な消費者態度に支えられた家計支出が成長の源となっている。一方、製造業生産の減少に伴い、企業投資や輸出は弱含んできた。海外経済の低成長と貿易政策からもたらされる不確実性を我々はずっと注視してきた」

「2018年の後半から世界経済は特に欧州と中国で減速した。数々の地政学リスクがあり、英国の欧州連合(EU)離脱の問題は解消されていない。貿易政策を巡る緊張は高まり、不確実性の高まりが米国の投資や輸出に重くのしかかっている。我々の産業界に対する聞き取りでも、事業における投資を減衰させていると聞いている。設備投資は4~6月期に緩やかに減少し、最近の指標でも弱含んでいる」

「それでも堅調な個人消費と金融環境が支える形で、我々は経済は緩やかに拡大していくとみている。FOMCの参加者による直近の予測では、実質国内総生産(GDP)の増加率は今年2%を維持する」

「労働市場は力強い。失業率は50年ぶりに近い低水準で、ここ数カ月も堅調だ。労働参加率は上昇し、賃金は特に低賃金の労働で上がってきた。仕事を見つけるのが難しかった低所得者層や中間層は、新たなより良い仕事につけている。我々は労働市場の強さは続くとみており、FOMC参加者による予測の中央値では今後数年、失業率は4%を下回る状態が続く」

「物価上昇率は過去12カ月間、2%の目標を下回ったままだ。変動の大きい食料とエネルギーを除いたコア物価上昇率は1.6%程度で推移している。いずれ2%に戻るとみているが、物価上昇圧力は明らかに弱く、長期的にみた物価上昇期待も低い。我々は、物価上昇率が2%目標を下回る状況が続き、長期的な期待インフレ率が好ましくなく下がることを警戒している」

「今日の利下げ決定は世界経済の成長と物価上昇圧力の観点に照らして適切だ。我々は前回の会合以降、海外経済の減速と、追加の制裁関税を含む貿易政策の緊張の再来といったさらなる経済減速の兆候を見てきた。米連邦準備理事会(FRB)は貿易政策に関する処方箋は持っていないが、雇用と物価上昇に関して経済に実質的に影響を及ぼす全てのことを考慮する」

「今後の金融政策は経済の進捗と見通しにかかっている。この政策はあらかじめ道筋を決めたものではなく、今日時点のものだ。既に述べたように経済の見通しは良好だ。今後数年の政策金利については小幅の変化の予測となっている。もちろん単なる予測であり、新しい情報次第で変える」

「今週、短期金融市場で金利が急上昇し、17日には政策金利の誘導目標(2.00%~2.25%)の上限を上回った。市場機能や市場参加者にとって重要な問題だが、経済や金融政策運営への影響はない。この金利上昇は法人税納付や国債の発行で、資金が民間から財務省へと移ったために起こった」

「私たちは17、18日に国債を担保に資金を供給する金融調節で対応し、金利上昇を抑えるのに効果を発揮した。超過準備への金利を誘導目標の上限から0.20%低い水準に設定する技術的な調整も実施した。金融市場の情勢を注視し続け、金利が誘導目標の範囲内に納まるよう必要に応じて金融調節を実施していく。FRBへの準備預金は十分にあり、頻繁に金融調節は必要とならない」

――7月の利下げは長期的な利下げサイクルの始まりではないとの説明だったが、今も同じ立場か。

「景気見通しは望ましい状況だ。緩やかな景気拡大が続き、労働市場は強く、物価上昇率は2%の目標近辺だ。この認識は多くの市場関係者の見通しと合致する。政策金利の微調整は、堅調な経済成長を保つのを助ける。7月の記者会見でも1995年と98年の事例を成功例として示した」

「こうした見通しは世界景気の減速や貿易交渉の進捗によって変わる恐れがある。経済が減速すれば、利下げの継続が適切な行動になり得る。ただ現時点では我々の想定には入っていない。引き続き状況を注意し、景気拡大が続くよう適切な行動をとっていく」

――FRBは金融緩和を進める立場にあると理解して良いか。

「立場(バイアス)の概念を長きにわたって取り入れていたが、今ではそういう慣行はなく、現在の立場を述べることはできない。あえて説明するなら、0.25%の利下げは我々の目標を達成するのに適切だと信じている。今後の金融政策を決めるのは新たな指標だ。景気拡大を維持するため、指標に応じて必要な行動をとる。金融政策は遅れて機能するので、その波及効果は時間をかけて感じられる」

「世界景気は減速し続けている。私は7月の会合時より弱まったと思う。貿易交渉は行ったり来たりで、この間に経済が弱含んだように見える。とにかく不安定な状況だ。引き続き状況と経済指標を注視する。金融政策の役割は下振れリスクに保険をかけて調整するだけでなく、我々が把握する経済の弱さを踏まえた上で景気を支えることだ」

「資産を事前に考えていたよりも早く、再拡大する可能性はあり得る。問題はいつ再開させるべきかということだが、これについては次のFOMCでも討議するだろう」

――FOMCの参加者間でも景気見通しと金融政策で意見が割れているが、議長の立場は。

「様々な見方があるのは確かだ。私は8年間FRBで働いてきた。これまでは意見を合わせるのは比較的たやすかったが、現在は判断が非常に難しい状況だ。ただ異なる意見があるのは健全なことだ」

――市場はFOMC参加者よりもリスクを懸念しているのでは。

「過去の歴史に照らせば、困難な状況が来る前に予防的に動く方が適切だ。FOMC参加者は経済の状況に応じて政策態度を何度も繰り返し変えてきた。年初には利上げが望ましいとみていたが、7月に利下げし、今回も再び利下げした。我々は経済指標やリスク次第で動くということを理解してほしい。こうした立場は今後も変わらない」

「いまは異例な状況にある。米経済の大半を占める個人消費は堅調だが製造業はそれほど強くない。概して経済成長率は2%を達成する状況にある。ただ米経済は他の経済圏よりも世界経済の影響を強く受ける。現在は見通しに対して大きなリスクがある。地政学的な事象に限らず世界経済の減速、貿易政策の不確実性、金融市場の状況などが経済見通しに影響を与える」

――貿易政策を巡る不確実性の影響を推定する研究を公表した。

「追加関税の影響など貿易政策の不確実性とその生産への影響を調べたが、22兆ドルの経済の特定の分野における影響を取り出すのは非常に困難だ。この研究は他のエコノミストの研究と一致する。地区連銀経済報告(ベージュブック)の内容とも一致している。不確実性は企業投資を弱め、輸出にも悪影響を与えているが、定量化は難しい」

「貿易政策はFRBではなく議会と政権の仕事だ。我々が貿易について話すのは我々の目標達成に影響を与える事柄は考慮すべきだからだ。我々の研究は貿易政策が経済見通しの重荷になっていると示している」

「我々には国際貿易政策の道筋は示せない。だが健在な金融政策は経済の弱さをある程度打ち消すことができる非常に強力な手段だ。我々の手段(利下げ)は金利負担を減らし、消費者に耐久財や住宅購入を促す。緩和的な金融環境は家計や企業の景況感も高める。金融政策は経済に悪影響を与えうる事象についてそれを和らげるため、幅広く機能する」

――利下げを続けることでFRBの余力が弱まる心配はないか。今後の金融危機の恐れと、マイナス金利は検討しているか。

「景気後退まで余力を残しておこうというのは間違いにつながりかねない。我々は政策金利の緩やかな調整が必要かどうかを注視している。景気がさらに弱まれば、我々もより積極的に動く準備をする」

「マイナス金利は(08年の)金融危機には視野に入れていた。結局は積極的なフォワードガイダンスと大規模な資産購入という、2つの型破りな金融政策を実施した。うまく機能したので、将来、金融危機が起これば、再び積極的なフォワードガイダンスと資産購入を行うことになるだろう。

我々は金融政策を精査している最中なので、長期的な枠組みや戦略、手段や(市場との)対話については来年半ばに答えることになるだろう。マイナス金利は検討していないし、選択肢の上位にない」

――不況の兆候とされる長短金利の逆転(逆イールド)が起きた。

「注意深くみているが、不況の兆候とは考えていない。あらゆる指標に基づき我々は前向きな見通しを持っている。長期金利は大きく低下したが、数日の間にその3分の2まで回復した。致命的になるのは、重大な変化が一定期間継続して見られることだ」

――低金利が個人と企業の負債を増やし、バブルにつながる懸念は。

「家計の状況は底堅い。借金は少なく、収入と利子のバランスも金融危機以前よりはるかに良好だ。企業債務は対GDP比で高水準だが、企業自体が成長している。好景気のサイクルで起きる事象であり、近い景気後退は起きないだろう。当然、後退のリスクは注視し、債務が世界のどの場所で膨らんでいるのかを特定する作業も進めている」

――金融政策で実現可能なことと限界をもっと明確にすべきでは。

「我々の仕事は、最大限の雇用と物価安定を達成するため、金融政策の手段を可能な限り上手に使うことだ。労働生産性を向上させるなどして米国の成長率を高めるには、財政政策の方がずっと有効だ。金融政策は長期的な成長率に影響を及ぼすことはできないし、潜在成長率を高めることは金融政策の役割ではない」

――トランプ米大統領がパウエル議長やFOMC参加者を「ばか者」「最悪のコミュニケーター」などと呼んで批判していることをどう思うか。議長会見の頻度を増やしたことを後悔しているか。

「後悔していない。政治家については言及しないし、政治家の発言に反応しないという自分の慣行を変えるつもりはない。FRBの独立性は長年にわたって公共に資してきた。引き続き、政治的配慮を排して金融政策を実施する」

――17~18日に実施した臨時の資金供給について、流動性低下を受けFRBの対応に懸念はないか。

「納税や大規模な債券の決済があることは認識していた。FRBの対応に懸念はない。今回の措置は景気全体や見通し、金融政策とは関係ない。米国債を購入するためと、法人税納税のための現金需要が想定以上に大きかった。政策金利を誘導目標内に抑えるために適切な行動を取り成功した。今後同様の状況が起これば対応することをいとわない」

「今年初め、FOMCは金融政策と(政策金利を誘導水準内に保てる)超過準備の体制について決めたが、この体制は適切だ。FF金利を誘導水準に保つためそうした金利の調整を利用する。今後も適切な超過準備を把握するために市場の状況を注視する」

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